【コラム・古家晴美】2006年に退職してから16年間、畑で自家用野菜を作ってきたつくば市在住の小島幹男さん(76)。地域の役員を務める飲み友達のグループでは、全員が家庭菜園で野菜を育てている。皆、実家が農家だったが、勤めに出ていた。定年退職後に、自分の食べる分だけでも、と始めた。

そんな仲間から、自然と野菜に関する情報が入ってくる。「これ、食べたことあるかー」と、新たな品種のものを持ってきてくれる。「うまいなー」と言うと、「じゃあ、種を持ってきてやるよ」と、やり取りが交わされる。

このようにして持ち込まれた野菜の中で、幹男さんと奥様の陽子さんのお気に入りは、赤玉ねぎとラッキョウをかけあわせた赤いエシャロットだ。普通のエシャロットが3月に収穫されるのに対し、1月には採れ、実も大きく、シャリシャリしている。3年前にもらった種が、畑でどんどん増えている。

この季節の収穫物は、大根、ネギ、白菜が主だ。大根は4種類作っている。青首大根をタクアンや切り干し大根用に作るほかに、切漬けや煮物用に少し短めの大根。また、赤い大根や中心部分だけピンク色の大根も栽培している。珍しい品種はたくさん作らないが、楽しみの一つだ。白菜やネギも2種類ずつ作っている。

大根のほかに、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、小松菜、ほうれん草、チンゲン菜、春菊なども。いずれも、種をまいて家の軒下で苗を育ててから植え付けた。

花畑の前で足を止め、立ち話

このほか、ネモフィラ、キンセンカ、パンジー、ビオラ、デイジー、菊などの花類も、種から育て畑の入り口に植えている。仏壇にはキンセンカや菊は供えるが、他の花は畑に植えておく。散歩する人が、筑波山に連なる宝篋山(ほうきょうさん)を眺めながら、この花畑の前で足を止め、立ち話をしていく。そのひと時を楽しめるように、花を植えているのだという。

これだけ様々な野菜を作っていて、最もおいしいと思ったのは何ですか、という問いかけに、陽子さんから即座に答えが返ってきた。「やつがしらですね」。胃の調子を崩したときに、軟らかくてクリーミーなこの里芋(さといも)を、煮たり味噌汁に入れたりして食べ続けた。もう少ししたら、本格的に収穫時期に入る。

また、畑には、小豆(あずき)をはじめ、大豆(だいず)、黒豆、花豆(はなまめ)など様々な豆類の葉が、青々と茂っていた。実がなり、自宅まで運ぶところまでは幹男さんの仕事だが、そのあと、鞘(さや)から実を出して選別するのは、陽子さんの仕事とのこと。

これだけの広さの畑から採れた豆が、どれだけの量になるかと思うと、気が遠くなる。陽子さんがんばってください。陰ながら応援したくなった。(筑波学院大学教授)