【コラム・若田部哲】夏。小美玉市の畑では「おみたまピラミッド」と呼ばれる、緑色の巨大な堤防のようなものが築かれます。その正体は、酪農家が育てた高さ4メートルにもなるトウモロコシを、刈り取り破砕して、ショベルカーやブルドーザーなどの重機でうず高く積み上げたもの。まるで土木工事のようですが、これを乳酸発酵させることで、乳牛のための良質な飼料となるのだそうです。

茨城県No.1の生乳生産地であり、2018年には「第1回全国ヨーグルトサミットin小美玉」が開催され、2日間で約4万人を動員した酪農王国・小美玉市。今回は、同市で30年以上にわたり、良質な乳製品を作り続けてきた「小美玉ふるさと食品公社」の木村工場長に、同社のヨーグルトのおいしさの秘密について伺いました。

おいしさの下地として、まず木村さんが挙げたのが、同社の前身である堅倉(かたくら)村畜牛組合が掲げた「土づくり・草づくり・牛づくり・人づくり」というモットー。冒頭で紹介した「おみたまピラミッド」は、まさにその言葉の象徴となる風景なのです。

そして次の秘密が、小美玉市の酪農家の密度の高さ。「酪農」といえば、多くの方はまず北海道を連想するかと思いますが、北海道は広大なため、各酪農家の距離が離れています。それに対し、小美玉は日本一酪農家の密度が高いため、生乳を速やかに酪農家から加工場である公社まで運搬することが可能です。

ヨーグルトは生乳の鮮度が命

ヨーグルトの原料となる生乳は鮮度が命のため、このスピード感は製品の品質向上のための大きなメリット。毎朝新鮮な生乳を酪農家から集め、少しでも鮮度が落ちないうちに加工するという基本に忠実な作り方が、同社のヨーグルトのおいしさの何よりのポイントなのだそうです。

さらに、乳酸菌がいかに心地よく乳製品にしてくれるか、温度・時間の管理がキモであり、酸味・甘味・なめらかさ・もっちり感、そのどれを最大限引き出すかが腕の見せどころとのこと。同社はその確かな加工技術により、看板商品「おみたまヨーグルト」のほか、同市産のフルーツを用いた季節ごとの小ロット多品種展開を行っています。

酪農には、観光牧場的方向性と生産品質向上の方向性があるなかで、あくまで品質での勝負・食品加工での認知向上を図っていきたいとの木村さんのお話でした。

6月には、パッケージにもこだわった新商品「OMIYOG CRAFT」も発売され、さらに展開が拡大していく小美玉のヨーグルト。全国随一の酪農環境が生み出す味わいを、ぜひお楽しみください。(土浦市職員)