【コラム・塚本一也】在来線の常磐線水戸~東京の最速ダイヤは75分です。新幹線ではありますが、宇都宮(栃木県)~東京は最速49分で結ばれています。このように時間距離が短いことで、宇都宮は東京通勤が十分可能な都市になっています。ちなみに、「水戸~東京:75分」を東北新幹線で探すと、「郡山(福島県)~東京:78分」に相当し、常磐線水戸~東京の時間距離がいかに遠いかが分かります。

都市間競争を考え、茨城の県都・水戸を東京通勤圏内とするには、常磐線の一層のスピードアップが必要となります。しかし、取手~東京においては、通勤時間帯にこれ以上ダイヤが入りません。根本的な解決策はバイパスをつくることですが、朝の通勤時間帯に1本だけ特急を走らせようとした場合、ホームに設ける柵など安全対策がネックになります。

茨城内の常磐線は踏切だらけ

取手以北の問題は踏切の数が多いことです。茨城県内の総キロ程数は180キロ669メートル、千葉県内のそれは23キロ940メートルですが、茨城の踏切数は167カ所(2020年現在)であるのに対し、千葉はなんとゼロなのです。千葉県内のキロ程は、ほぼ取手~荒川沖(26キロ340メートル)となりますが、その間に踏切は34カ所もあります。

千葉県の常磐線沿線自治体は、鉄道と道路の立体交差事業に積極的に取り組んできたわけです。千葉県は東京への通勤圏として人口が増加し、その通勤手段である常磐線の安全・安定輸送が課題でした。そのため、鉄道側は常磐線に緩行線を設けて複々線化し、千代田線との相互乗り入れも図りました。加えて、第2常磐線を計画し、つくばエクスプレス(TX)につなげたのです。

また、我孫子市や柏市などは、踏切事故があるたびに、その対策として立体交差事業を進め、「開かずの踏切」解消策として跨(こ)線橋などを地道に設置してきました。その結果、現在の輸送体制を築くことができたのです。

「開かずの踏切」解消は立体化が必要

これに対し茨城県内では、例えば友部駅構内の友部里道踏切など、大きな事故がありましたが、立体交差には至っておりません。通常、駅舎の建て替えは、自由通路を建設するための支障移転として駅舎を橋上化する―という理屈で予算要求をします。

常磐線・水戸線が通過する友部駅構内にある友部里道踏切

その際、駅周辺整備事業として、駅近くの踏切を立体交差化したりするケースはよくあります。しかし、茨城県の場合、神立も石岡も友部も、踏切を残したまま駅舎を建て替えてしまいました。

今、県内の常磐線で一番の問題は、龍ケ崎市駅の水戸方面にある「第2竜ケ崎街道踏切」です。国道6号線への抜け道となっているため、通過交通が多く、要注意踏切の代表格になっています。同市の萩原勇新市長には是非、立体化に取り組んでもらいたいと思います。(一級建築士)