【コラム・及川ひろみ】本格的な春、里山はとてもにぎやかです。谷津田(やつだ)で明るくコロコロ鳴くのは、シュレーゲルアオガエル。姿はなかなか見られませんが、目の高さの樹木の葉の上、枝に鎮座しているのが見られます。アマガエルより大きく、時に黄色の水玉模様が体全体に見られるものもいます。

また、田んぼの縁をよく見ると、アメリカザリガニが空けた穴に真っ白な泡の塊を見つけたら、しめしめ。このカエルの卵塊。多くのカエルは水の中に卵を産みますが、このカエルの仲間は突き出た枝や湿地の枯草の隙間などに生みます。シュレーゲルアオガエルの小さなオタマジャクシは、雨降りのときに田んぼに滑り降ります。

このオタマ、他のカエルの卵と異なり、卵塊の中のたまごの色は黄色。生まれたオタマジャクシは、最初は薄茶、間もなく色が濃くなります。

木の上で大きな声でケケケケケと鳴くのは、ニホンアマガエル。汗ばむような暑い日に、よくこの声が聞かれます。夜になると、あちこちで「ゲロゲロゲロ」とにぎやかに鳴きます。人が近づくと、ピタッと一斉に鳴き止みますが、そっと探すと鳴いている姿が見られます。口の下の皮膚を風船のように大きく膨らませ、懸命に鳴くアマガエル。

田んぼは平らなようでも、懐中電灯で照らして探すと、あちこちに水の上にできたわずかな陸が方々にあり、その上や、草が茂る根際などで懸命に鳴くカエルが見られます。

今年も「田んぼの学校」がスタート

それにしても、昼間は樹上でケケケ、夜は田んぼでゲロゲロと、日中と夜では居場所も声も全く異なります。若いころ、木の上でケケケと鳴く生き物の正体が知りたいと、よく目を凝らし探したものです。ようやく正体が分かった時の驚き、今も新鮮によみがえります。

今ごろの田んぼをのぞくと、♪型のオタマジャクシがたくさん泳いでいます。ニホンアカガエルのオタマジャクシ。寒い時期に産み付けられた卵から生まれたオタマジャクシは、もうすぐ子ガエルになって陸に上がります。

上空からは、里山の鷹「サシバ」が春を謳歌(おうか)しています。サシバがひなを育てるときには、カエル、ヘビがたくさん必要です。里山では毎年、複数のサシバのひなが育っています。

認定NPO法人「宍塚の自然と歴史の会」では、親子で田んぼ体験、食育、自然学習などを行う「田んぼの学校」が今年も始まりました。参加者は41組の親子約100名。密にならないよう数回に分け、種もみをまきました。近隣の幼稚園、保育園の子どもたちも里山の自然を求めてやって来ます。

春の里山には、子どもの声がこだましています。よい季節になりました。皆さまもお越しください。(宍塚の自然と歴史の会 前会長)