【コラム・及川ひろみ】宍塚の里山、今の季節、林も芦原も小鳥達がとても賑やかです。雑木林は葉が落ち、小鳥たちが木から木へと渡って行く姿が肉眼でも捉えられます。小さな白い体に長い尾のエナガ(ひしゃくの柄に見立て、尾を柄と呼びます)は、アクロバットさながらの軽業で隠れる虫を探しながら、細い声でチーとかツリュリュと鳴きながら林を渡って行きます。

エナガに続きシジュウカラ、ヤマガラ、メジロ、コゲラなどの姿形の違う小鳥たちが立て続けに現れ、通り過ぎるのもこの季節ならではの光景です。この姿はアシ原でも見られます。これらの小鳥以外にもツグミ、シロハラ、アカハラ、カケスなど、少し大型の鳥達が見られるのもこの季節ならではのことです。

特に注目は、小鳥やカケスなどの鳥たちが、賑やかに鳴き騒ぎたてることがあります。そんな時には、しばらくその場でじっと様子を見ましょう。彼らを襲う猛禽類が潜んでいることがよくあるからです。タカやフクロウに襲われまいと、小鳥たちは「そこに隠れているの、分かっているよ」とでも言うように、騒ぎ立てます。しばらくすると、根負けした猛禽類がよく姿を現します。オオタカ、ハイタカ、フクロウなどを見るチャンスです。

ジョウビタキ、ルリビタキも里山でよく見る冬の小鳥です。ルリビタキは成熟したオスは瑠璃色でとても美しい小鳥、「幸福の青い鳥」の話に出てくるような小鳥です。ルリビタキはジョウビタキより少し暗い林がお好みです。どちらも実はとても好奇心が旺盛な鳥で、林近くで作業をしている時など、すぐ近くまでやって来て、「何をしているの」とでも言いたげに首を傾げたり、尾を振ったりするのが見られます。

冬季、里山にはどうしてたくさんの野鳥が見られるのでしょうか。鳥は冬も餌が必要です。一見枯れた草のように見える枯草も、よく見ると種がたくさんついています。シードイーター(種を食べる小鳥)と呼ばれるホオジロ、アオジ、カシラダカ、ベニマシコなどが多く見られるのは、草の種・木の実が豊富なためと思われます。また小さな昆虫を食べるカラの仲間や、キツツキの仲間、ツグミの仲間は落ち葉の下や木々、草に巧みに隠れる生き物を捕える姿をよく見ます。

若いころ、「冬鳥を見る」と謳った公民館の集いに参加しました。野鳥の専門家と貸し切りバスで笠間方面の少し高い山に向かいました。寒い山中をうろうろ歩きまわりましたが、全く小鳥を見ることができませんでした。小鳥にとっては平地の里山の方が冬をやり過ごしやすいことが伝わってきました。しかし、特に初めて冬を迎える若いフクロウやタカ、小鳥にとっては、狩りやエサ採りが充分上達していないこともあり、冬はなかなか厳しい時期でもあります。(認定NPO法人「宍塚の自然と歴史の会」理事長)