【コラム・先﨑千尋】先月22日、日本原子力発電(原電)はこれまで茨城県と東海村のみに与えられていた東海第2原子力発電所(東海第2)の再稼働や40年を超えて運転する際の「同意権」を原子力所在地首長懇談会(東海村、水戸市、ひたちなか市、日立市、常陸太田市、那珂市の6市村で構成)に拡大する、そのための新協定を結ぶ、と回答した。

その翌々日、原電は原子力規制委員会に最長40年の運転延長の申請をした。今回の申請は、東海第2の再稼働に向けてのことだと考えられるが、原電の村松衛社長は記者会見で「原電の社内でも再稼働の方針を決めたのではない。申請しないと自動的に廃炉になるから」と話し、東海村の山田修村長も「延長申請は安全審査の一環で、再稼働とは直結しないことを確認した」と述べている。

原電が規制委に延長申請を出した24日、県内の市民グループ53団体が共同で原電に対して「運転延長に対する抗議文」を提出し、共産党、社民党、常総生協、東海第2原発を止める会などが申請撤回の申し入れや抗議の声明を発表した。

私はこれまで『常陽新聞』などに東海第2の再稼働について、何度かその危険性を書いてきた。身近な人たちは「いくらなんでも東海第2は政府が動かさないだろう」と言ってきた。でも、今回の原電の一連の動きを見ていると、「まさか」がまさかでなくなると思えてならない。

東海第2を動かすことは何故危険なのか。

東海第2は福島で事故を起こしたものと同型の沸騰水型原発。他の同型の原発は廃炉になったか廃炉が決まっているかで、東海第2が最も古い原発になっている。しかもこれまで機器トラブルがどこよりも飛び抜けて多く、寿命が尽きたと言われている危ない原子炉だ。

さらに東海第2は首都圏100㎞に位置し、事故を起こせばわが国は壊滅的な打撃を受ける。東海村上空の風の7割は東京方面に向かって吹いている。土浦市やつくば市が危ないことは福島第1の事故で証明済みだ。オリンピックの最中に事故が起きたらだれも責任を取れない。北朝鮮が狙い撃ちをすればひとたまりもない。

原電は1800億円もかけて安全対策を講じるようだが、テロ対策等の特定重大事故対策のためにさらに1000億円もかけるとか。元が採れるわけがない。そのツケは私たち国民に回ってくる。避難計画だって、橋本昌前知事ができないと選挙で言っていた。

新協定の締結まで紆余曲折があるようだが、協議の範囲が広まり、周辺の住民がモノを言える場が広がりそうだ。議会や首長の動向が大事なので、多くの人が反対の声を上げること。

伊方原発では広島高裁が停止命令を出した。6市村の住民だけでなく、県内外の人の声と動きが東海第2の再稼働を止められるかどうかの試金石になりそうだ。(元瓜連町長)