【コラム・坂本栄】このサイトの編集では行政の監視が一つの柱になっています。今回のコラムでは、先の「つくば市のコロナ対応を点検」(5月4日掲載)でも少し触れた「市内事業者応援チケット事業」の問題点を取り上げます。秋の市長選挙を意識して急いだのでしょうか、五十嵐さんが打ち出した施策は「生煮えだった」という話です。

Cファンディングって何?

4月20日に公表されたチケット事業は、コロナ禍で売り上げが減っている事業者を助けるために、将来のサービスなどが約束されたチケットを、市内外の応援者(将来の利用者)に前倒しで買ってもらう―という仕組みです。一時あちこちで扱われたプレミアム商品券の業者救済型といえます。

支援策としては気の利いた内容ですが、問題もありました。応援者はチケット(モノやサービスの提供が約束された金券)を受け取るものの、入金先がクラウドファンディング(CF、寄付感覚もあるリスク承知の投資資金をネットで集める方法)の窓口であるために、チケットが紙クズになっても文句を言えない仕掛けになっていたからです。

つまり、応援のお礼が金券なのか、見返りを求めない寄付なのか、それとも株並みの投資なのか、応援者の理解(誤解?)に任せられていたのです。金融商品に例えると、元本が保証されている預貯金とも、全損もあり得る証券類とも理解できるような、変な制度設計でした。それを自治体が主導したわけですから、設計としては完全にアウトです。

業者応援で制度設計を修正

私のコラムでの指摘のほか、市民からも似たような声があったのでしょうか、 市はこの応援チケット事業の設計を内々に変えました。

10日ほど前、市の担当者に聞いたところ、おカネ集めにCFの機能は使うものの、投資の要素は限りなく排除し、原則として金券と位置づけ、寄付でもOKの人の応援はもちろん受け付ける―という運用原則に変更したそうです。具体的には、事業者が閉店してチケットが無効になったときは、市が払い戻しに応じるとのこと。また、外部委託を考えていた事務局の機能は、市の経済支援室が引き取ったそうです。

この結果、チケットとの理解で応援してくれる人が9割、寄付でも構わないと言う人が1割になると予想しています。事業設計としては、CFが持つリスキーな要素がなくなり、応援に対するリターンは安心な商品券でという形に落ち着きました。

この事業を4月に公表したとき、市はどうして「クラウドファンディング」を前面に押し出したのでしょうか? どうやら、いま流行(はやり)の仕掛けということで、採用されたようです。五十嵐さんはCFを制度設計の柱に据えましたが、詰めの作業で修正を迫られました。選挙が近づくと、面白いことが起きるものです。担当職員はお疲れ様でした。(経済ジャーナリスト)