【コラム・先﨑千尋】従兄弟の家から1周忌の法事を中止するという電話があった。農協時代の仲間の久しぶりの懇親会も取り止めるという。5日に予定していた、夭折(ようせつ)の天才画家と言われた寺門彦壽の作品を那珂市に寄贈する贈呈式も延期という連絡。埼玉からは「むのたけじ地域・民衆ジャーナリスト賞」受賞の集いを延期するというはがきが届いた。

このほかに、私が参加、出席を予定していた研究会、講演会、集会などがすべて取り止めか延期になってしまっている。私が住んでいる那珂市では、図書館や公民館などの公共施設が6日から閉鎖された。市内のもろもろの団体の活動ができなくなってしまった。

この1カ月余り、テレビも新聞も新型コロナウイルスのことばかりだ。安倍首相の唐突な要請を受け、全国の公立小中高がほとんどすべて休校になった。その影響も伝えられているが、半端ではない。子供もその親も、先生方もとまどっている。学校給食が中止になり、牛乳、パン、おかずの食材納入業者は困り切っている。仕事を持つ母親は大変だ。北海道のある病院は170人もの看護師などが休まなければならず、運営に支障をきたしているそうだ。

県内では、偕楽園の行事が中止になり、鹿島神宮の重要な祭頭祭も延期される。東京では、歌舞伎座や帝国劇場の公演も中止だそうだ。学生の一生を左右する会社説明会も相次いで取り止めになり、大相撲、高校野球は無観客試合になるとか。各地のイベント、ジムなども自粛させられている。デパートや観光地の客足が減るなど経済活動は停滞し、世間全体が窒息状態になってしまっている。

「戦時体制」の再来?

それだけではない。安倍首相は、今週中に新型コロナウイルスの感染を防ぐための特別措置法を制定しようとしている。誰も正面切って反対しにくい空気だ。この法案の目玉は、首相が「緊急事態宣言」を出せることだ。

この宣言で想定される措置の内容は、すでに行われている「住民への不要不急の外出自粛。学校や社会福祉施設の使用制限。映画、音楽、スポーツなどの興行場の使用制限要請、指示」のほか、「臨時医療施設のための土地や建物の強制使用、医療品や食品の収用」ができるというもの。「戦時体制」の再来ではないか。

今回の学校の一斉休校措置は、菅官房長官や萩生田文科大臣ら側近の声を聞かず、今井首相補佐官の提言で性急にことを進めた、と伝えられている。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号で、厚労省の医師や専門の職員が入船したのにどうして感染が広まったのか、止められなかったのかという検証はされず、一斉休校の科学的根拠も示されていない。さらに、学校だけでなく、社会全体が受け入れ態勢が整わないまま、首相の鶴の一声で権力を行使する。

憲法や法律の解釈を自分に都合のいいように変え、改元の一連の動きの時のように天皇ですら自分の下に置くという今の首相だから、自分が動かしやすい法律を作り、天下に号令をかけることなど簡単なことだと思っているようだ。これは新しい形のファシズムなのではないか。(元瓜連町長)

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