【コラム・浅井和幸】今日も私の携帯には電話がかかってきます。第一声が「そちらでは何をしてくれますか」で始まる質問が10件に1件はあります。できることのカテゴリーを少しでも絞れたらと思い、何を見てこちらに電話をかけてきたかと私から質問をしますが、それに答えられない方もいます。

見ず知らずの、何をしてくれるのか分からないところに電話するのは、とても怖いことなのです。しかも悩みを相談するのですから、自分のあまりよくない状況、人に伝えるのははばかれるような、プライベートなことを話さなければいけないわけです。

その相談会、NPO、一般社団法人や、浅井という人間が信頼に足る人間であるかどうか分からないことは、とても不安ですよね。20年ほど前の私は、そのような気持ちを汲み取れず、悩みを話さず名乗りもしないと、ムッとしていたものです。経験不足と若さが、今となってはとても恥ずかしく苦い思い出です。

今では、何を求められているか分からない相談者には、最初からひとつひとつ説明していきます。浅井心理相談室では、心理的な悩みを主に面談で受けます。人間関係、感情の問題、些細な引っ掛かりなどから、心の病までです。

NPO法人アストリンクでは、不登校・ひきこもり・ニートの問題に、相談だけでなく、居場所事業や訪問サポートなどでも対応しています。一般社団法人LANSでは、アパートなど住む所が見つけにくい方(生活困窮、障害者、高齢者、DV被害者、母子・父子家庭)を対象に、一緒に探したり、食料支援も行っています。

無料相談も定期的に開催していますので、そのほかの問題でも、ネットワークの専門家をご紹介できるかもしれません。

味方だと感じてもらえること

以上のことを話していくと、ネットのアストリンクのサイトを見てとか、市役所からの紹介でLANSを知って、と話をしてくれます。そして何に困っているかを話してくれるものです。中には、その場で相談継続を決めることはできないから、後日、家族と相談をしてから連絡をしてくることもあります。

私が具体的にしてきたことを伝えつつ、信頼関係を築くこと、味方だと感じてもらえることが、後々も大きなよい影響につながります。10年以上前の私は、味方であることばかりを強調しようとしていた気がします。味方であることのアピールと味方であると感じてもらうこととは、ちょっと違っていて、結果、大きな違いであると今では考えています。

苦しく余裕がないときは、周りは苦労もなく器用に自由に生きていると感じやすいものです。そして味方が誰もいないと感じ、孤立し、孤独を感じて毎日を送るようになります。

そのような状況に、少しでもできることを一緒に探し、悩み続けられたらと、相談を受け続けています。数年後は、問題対応能力を上げるため、もっともっと、知識や技術、連携を増やしていきたいと考えながら。(精神保健福祉士)

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