【コラム・先﨑千尋】学生時代によく歌われた歌に「沖縄を返せ」があった。

<われらは叫ぶ 沖縄よ われらのものだ 沖縄は 沖縄を返せ 沖縄を返せ>

この時はまだ沖縄の返還前だから、返せという相手はアメリカだ。今はどうか。

先月24日の辺野古沖新基地建設に対する沖縄県民投票で、投票率が52%を超え、反対票が玉城知事の得票数より多い43万票。反対票が71%を占めた。しかし、政府はその翌日から辺野古沖の埋め立て工事を再開した。今月1日の玉城知事と安倍首相の会談ももの別れに終わった。

この会談で玉城知事は、県民投票の結果を通知し、辺野古埋め立ての中止を要請した。これに対し、安倍首相は「真摯に受け止める」としながら、「普天間の危険性を除去するために辺野古への移設は先送りできない」と冷たく言い放ち、沖縄の民意を無視する態度を貫いた。菅官房長官や岩屋防衛相の発言を聞いていると、投票で反対が多くとも工事は進めることを事前に決め、首相も了解していたという。

ここで、県民投票直後の新聞論調を見てみよう。

全国の新聞の全部を見ているわけではないが、多くの新聞は社説などで、「新基地ノーという民意は示された。沖縄の思いを受け止め、工事は中断すべきだ」と書いている。地元の「沖縄タイムス」は「安倍政権の強引な埋め立て政策が民意によって否定された。工事を進め、力ずくで押しつぶそうとする強硬一辺倒の姿勢に納得できない」(北海道、山形、茨城、東京、毎日、京都、徳島、西日本なども)と書いている。

これに対し「読売」は、投票率が52%だったことをとらえ、「広がり欠く。政府、工事推進へ」と見出しを立て、反対が多数でも影響は限定的だ、と書いた。「産経」は、「外交・安全保障政策は政府の専管事項であり、米軍基地をどこに設けるかは、政府以外には決められない。(移設を)県民の直接の民意だけで左右することはできない」と民意を突き放した。

次に、論点を整理しておこう。

民意を無視した「国策」は、「国と地方公共団体の関係は、上下・主従の関係から対等・平等」とした2000年の地方分権一括法に明らかに反する。では憲法ではどうなのか。憲法学者の小林節慶大名誉教授は「安倍政権には、住民投票の結果に拘束される憲法上の義務がある。政府は建設を断念しなければならない。国策であっても、特定の自治体に適用される特別法は、その自治体の住民投票で過半数の同意が必要で、住民に拒否権がある」と述べている(「東京新聞」など)。

他にも、民意を無視し、工事を強行している現政権に対して、この国は民主主義国と言えるのか、というコメントをたくさん見ることができる。

埋め立て工事が進められている大浦湾には「マヨネーズ並み」と言われる軟弱地盤があり、最も深い所は水深30メートルの海底の下に60メートルの軟弱地盤の層があり、砂の杭7万5000本を打ち込まなければならず、2兆円以上かかるという。しかし、国はその工事にかかる工期や費用を明らかにしていない。

問題は他にもたくさんある。玉城知事の一国二制度という提案もある。今、国に求めることは、工事を中止し、米国政府と代替案を検討することだ。改めて「沖縄を返せ!」