【コラム・石井康之】最近の朝はとても早く目が覚める(5時いや4時半もある)。荒川沖の知人の家に来ると、朝からやりたいことが山ほどある。先日も網戸の張り替え、竹の伐採、庭の草むしりもした。根が深い雑草は、鍬(くわ)で根から切り込む。

作業は午前中の涼しい時間から始めるが、Tシャツはすぐに汗でびしょびしょになってしまう。タオルもTシャツも何枚あっても足りない。しかし、朝食は近くの畑で採れるものをすぐいただける。

近所の知人の親せきなどが、新鮮な野菜をたくさん持ってくるという。ただ家の周りには見たこともないような虫がたくさんいるため、よくホームセンターに薬を買いに行く。何年か前だと、海外や国内の展示会のスケジュールだけで日々が過ぎていた。余裕もなく…。

最近は、近くの荒川沖のスーパーにもパン屋にも行く。すし屋や飲み屋の人に話し掛けられるようにもなった。私は海外へ展示会で行ったとき、出掛けて留守になっている知人宅に泊まることが多いが、そこで食材調達を自分でしていたときに似た感じがする。

たまに道を歩いていると、見知らぬ人から「こんにちは」と声を掛けられたりもする。こんな些細(ささい)なことがとても新鮮で、大切な気がする。これは私だけではないと思いたい。今度は東京でも近所の人に自分からあいさつをしようと思う。

古いものを残しつつリノベーション

先日は県北・大子町の花火と灯篭(とうろう)流しを見に行き、とても懐かしい気分になった。多分、昔、家族や友達と見たときの思い出とリンクしたのだろう。花火が始まるまでの夜店の探索(たんさく)、これは幾つになっても変わらない。

大子の花火は、川沿い、橋の上、商店街からはもちろん、ひな祭りに人形を飾る百段階段の上からも見られる。送り盆の時の花火は、故人があの世へ帰れるようにする合図ともいわれ、神聖なものだ。

大子町には、毎年何万人も花火を見る人が来ていて、リノベーションして感じのよいカフェ・蔵・洋品店・学校などが点在しているが、昔そのものを残したような建物もある。新しいだけの建物も悪くはないが、古いものを残しつつ、リノベしていくのも大事な気がする。

この町は交通手段がよくはないと思うが、不思議な魅力を感じた。小さなまちでもアイデア次第で素敵なまちに変われると、私は考える。今週からトルコに10日ぐらい旅をする。日本とは違う文化に触れられるのはとても楽しみだ。(ファッションデザイナー)

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