《続・平熱日記》42 映画では愛されるネズミを退治


【コラム・斉藤裕之】小さいころ睡魔と戦いながらテレビで見た映画。なぜか、カワウソや恐竜トリケラトプスと少年の話など動物ものはよく覚えています。なかでもネズミと友達になる映画は印象的でした。そのネズミの名前は確か「ウイラード」。

わが家は天井や押し入れがないので、ネズミには住みづらいはず。現に10数年の間にネズミはおろか、ゴキちゃんさえもほとんど見たことはないのです。

ところが先日長女が遊びに来た折に、台所の流しをネズミが走ったのを見た、と言うのです。はて、流しの右には壁に隙間なく置かれた棚があって、左側にはこれまた壁にぴったりと冷蔵庫が。どう考えてもネズミが流しに昇ることは不可能かと。

ところがある日のこと。久しぶりにクスクスでも作ろうかと、冷蔵庫の向かいにある戸棚に手を伸ばしたとき、袋からザザーとクスクスがこぼれ落ちるではありませんか。ちなみに、クスクスは北アフリカ料理に使われる最小のパスタなんて呼ばれる小麦粉のつぶつぶ。すわ、何者かがクスクスの袋を食い破って盗み食いしておる。それはネ・ズ・ミ!

そう思って見張っていると、本当に小さな黒い影のようなものが流しの淵を一瞬駆け抜けるではありませんか。そこでよくよく調べてみると、冷蔵庫の下にほんのわずかな隙間があることに気づきました。

まさかここ? いやここしかありません。ネズミの存在を確信した私。早速ホームセンターでネズミホイホイを買い求め捕獲に成功。一件落着。

ヘビやワニの皮に群がる女性

ところで、かのディズニーが生み出したネズミは、今や誰もが愛するキャラクター。ランドでは着ぐるみにハグされてみんな有頂天。しかし実際にネズミが出れば100パーホイホイ。

生きている姿はグロいのに、形が変わるとオッケーな例。ちょっと強引な例かもしれませんが、例えば「玉虫厨子(たまむしのずし)」。元々はもぞもぞと動く虫の羽。美しいとはいえ、ありがたいお厨子に貼る神経。例えば蛇(へび)や鰐(わに)の皮。生きていればおおよそ気持ち悪い生き物なのに、バッグや財布に形を変えたとたん、「すてきねー」と群がる女性の心理。

しかし実際のネズミはかわいらしいもの。もしも私が小さな子供だったら、親に内緒で「ウイラード」という名前を付けて、餌付けでもしたかもしれません。また、最近都内に出る度に「都会のネズミと田舎のネズミ」という寓話を思い出すようになったことも付け加えておきます。(画家)

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