【コラム・斉藤裕之】このところの5月3日は、牛久市にある澤田茶園で「新茶摘みとピザの会」。今年も好天に恵まれ多くの人が訪れ、茶畑では八十八夜の新茶摘み。用意したピザも大好評のうちに無事にイベント終了。夕方からは、手伝ってくれたジミーちゃん(日本人です)宅で、「お疲れさん会」へと流れ込みました。

実はこのジミーちゃん、40も半ばを過ぎた誰もが認める正しいやもめだったのですが、この茶摘みの会で知り合ったハルちゃんと電撃結婚。新居は大工であるハルちゃんのお父上の渾身(こんしん)の作。料理は、玄人はだしのジミーちゃんの担当。とくれば、酒も進み宴もたけなわとなったころ、話題はひょんなことから仏像に。

さすが牛久というかお膝元というか、仏像や仏教についてうんちくが披露される中、「実は俺はその昔、大仏って呼ばれていてさあ…」と私。

高校を卒業していよいよ上京するとなった時のこと。小さいころからお世話になっていた坂本理髪店のおじさんが「斉藤君、東京に行くのを祝っておじさんがサービスしてあげよう」ってことで、かけてもらったのが当時流行っていた?パンチパーマ。「ありがとう。わしも頑張るけえ」って意気揚々と上京して間もなく、付いたあだ名が「大仏」。この話で一同爆笑。

さらに、「斉藤君、これで2、3カ月はバッチリじゃ」という坂本のおじさんの太鼓判と相反して、先の丸まったまま根本だけ伸びていく髪の毛はちょうど蕨(わらび)かぜんまいのようになってしまったというエピソードに、腹を抱えて笑われてしまいました。

ちょうど10数年ぶりに坊主頭を止めて髪を伸ばし始めた私でしたので、一層話も盛り上がったのでしょう。

うんこはなぜとぐろを巻くのか?

いささか罰当たりな話ですが、螺髪(らほつ)と呼ばれる仏様の御髪(おぐし)は文字通り螺旋(らせん)構造。「人の体、自然、宇宙全ては螺旋でできている。例えば、うんこはなぜとぐろを巻くのか?」。これは芸大の生物学の故三木茂教授の名物授業。

また思い出すのは、フランスで長女と仲良くしてくれたアルジェリアの作家の子供達、アメルとナディア。イスラム教徒の姉妹の髪の毛は、見事な螺旋状でほんとにクルクル。一方、デューラーの描くキリストもクルクルパーマ。つまり、3大宗教のルーツもお茶の葉も蕨もぜんまいも、つまり、宇宙は螺旋のクルクルなのです。

時間や思考も螺旋状? それらが交わる瞬間を運命とか奇遇とか言うんでしょうか。奇しくも、この日、かみさんが次女の働く美容院へわざわざ髪を切りに行きました。なんとその店は、パンチパーマの私が東京に来て初めての日々を過ごした先輩のマンションのすぐ近く。かみさんはクルクルパーマではなく、緩やかなカールで帰宅しました。(画家)

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