【コラム・浅井和幸】良いことをすれば良いことが起こり、悪いことをすれば悪いことが起こるという考え方は間違いだよ。まずい料理を作った人が悪人とは限らないし、がんになることは悪い人間だからではないよ、という文章を1年ほど前に書きました。

私たちは一つの原因が一つの結果に結びつくと単純化して考えやすいものです。ゲームは「悪者」だからと禁止したくなるし、いじめだけが原因で不登校になると考えたくなるし、陰口を言われている人は何か悪いことをした人だと決めつけたくなるものです。

自分とはそれほど関係ないことを単純化して考えることは、必要なことではあります。あまり関わりはないのですから、深く考えても時間の無駄で、もっと優先順位の高いことに時間も労力もかけた方がよいでしょう。

しかし、自分にとってかなり重要度、優先度が高い事柄も、原因と結果を1対1で単純に結びつけてしまいやすいものです。それが地域や国だったら大変なことですよね。

スズメとイナゴ オオカミとシカ

県内でも農作物が食い荒らされる獣害の問題があり、獣害対策サポーターを育成するなど対策が考えられています。ある国では、農作物がスズメに食べられ損害が出ることの対策として、スズメを大量に駆除しました。結果、今までスズメが食べていたイナゴなどの虫が大量発生し、農家は大打撃を受けることになり、海外からスズメを輸入することとなりました。

別の話では、オオカミを退治すれば、人間がシカを多く狩り食せると思ったけれど、シカに病気が蔓延し、減ってしまった例もあるそうです。オオカミは弱ったシカを食べていたようです。生態系は微妙なバランスで出来ているので、オオカミがいなくなりシカが増えすぎて困ることもありますから、難しい問題ですね。

トライアル・アンド・エラー

単純に原因と結果を決めつけると危険であるということですが、人間に話を戻すと、例えば、リストカット(自傷行為)。精神的なストレスや身体的な疲労が原因で、自傷を繰り返す例があります。とても痛々しいことで、すぐにやめさせたいと思うのが親心です。自分の子どもに「そんなことを2度とするな」と、怒ってしまいたくなる気持ちも分かります。

その後、パッと見た感じではリストカットをしなくなった様子で、親御さんは「やっぱり、きつくしかりつけて正解だった」と考えますが、実は見えにくい腕や足を切りつけているというケースもあります。

単純に考えちゃだめだと、身動き取れない状態になることはお勧めしませんが、それと同じぐらい、目の前で起きていることを受け入れずに、単純に考えての言動は危険です。物事がどのようなときに、自分がどのような言動をしたら、物事はどの様に変わったか、丁寧にみるようにすることが大切です。トライアル・アンド・エラーが大切ということです。(精神保健福祉士)

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