《制作ノート》3 つくばみらい市の不動院を描く

雪の板橋不動院本堂㊧と三重塔(絵:沼尻正芳)

【コラム・沼尻正芳】初詣は、近くの板橋不動院に行っている。若い頃は除夜の鐘を聞きながら、最近は朝8時過ぎに出かけている。不動院は毎年、多くの参拝者で賑わう。

つくばみらい市にある不動院の正式名称は、清安山不動院願成寺。弘法大師空海が約1200年前に創建した古刹(こさつ)である。かつては七堂伽藍(しちどうがらん)の寺だったが、戦火で消失し、現在の建物は江戸時代に建立された。関東三大不動尊の一つとも言われている。

境内に入ると、朱塗りの楼門が出迎え、正面には本堂、右側には三重塔などがある。いずれも県指定文化財である。本尊は、空海が自ら彫刻したと伝えられている秘仏の不動三尊像(国指定重要文化財)で、年3回の開帳がある。本堂の中には、葛飾北斎直筆の絵馬が2点ある。

不動院に隣接する板橋小学校の6年生は、不動院を毎年写生する。宮大工が作った建物は、いずれも豪壮で、花鳥や龍などの彫刻で飾られ緻密(ちみつ)で実に美しい。これを絵にするのは至難の業である。子どもたちが一生懸命に描いている姿を見て、私もいつか不動院を絵にしたいと思った。我が家は不動院の檀家でもある。

雪の日に生まれたと聞いた私は、雪景色にも人一倍思いがある。最近、雪の日は珍しくなったが、雪が降るといつも不動院に向かう。朱塗りの不動院と白い雪のコントラスト。手が凍える中で早めのスケッチをし、写真を何枚も撮って数年間、不動院と雪景色の構想を考えていた。

風雪に耐え凜と立つ三重塔

2017年、雪降る中で背筋を伸ばして立つ三重塔をイメージし、80号のキャンバスに描くことにした。塔の手前に雪でしなだれる百日紅(さるすべり)の枝、雪をまとった塔と風に舞う雪、背景には雪で霞む欅や杉の大木。実際よりも雪を降らせ、風雪に耐え凜(りん)と立つ三重塔にしよう。塔の繊細な作りや色をどう取捨選択し、堂々とした塔の姿とどう両立させるか。雪空と降っている雪、積もった雪の白をそれぞれにどう変化させ融合させるか。この絵を描くことで学べたことがいろいろとあった。

昨年は、雪の日の本堂を同サイズで描いた。不動院境内には桜や銀杏、杉や欅などの大木が林立していたが、年々伐採され、今は少なくなった。以前にあった大きな桜の木を本堂の前に描き、枝越しに見る本堂に参拝する人を加えた。

三重塔の絵は、昨年、不動院に奉納させていただいた。本堂の絵は市に寄贈できたら、と考えている。絵を描くことで、少しでも地域に恩返しできればと思う。(画家)

【PS】 「塔に雪降る」(不動院三重塔)は、不動院入って右側の参詣者休憩所内に飾られています。不動院参詣の際はご笑覧いただければと思います。