《続・平熱日記》26 南フランスと牛久のワインシャトー


【コラム・斉藤裕之】フランスのスーパーには300円前後のワインが無数に並べられています。毎日違うワインを1年間飲み続けられるほど。そんな安いワインはいっぱい飲みましたが、特にワインについて造詣が深いわけでもありません。ただラベルを見て、高いワインかどうか少しだけわかります。

もちろん、見た目で印刷が凝っているラベルのものはそれなりの値段だったりしますが、ポイントはどこでビン詰めされたワインかということ。安いワインはある地域ごとに集められてワインにされますが、高いものはシャトーと呼ばれる醸造所ごとにつくられます。ラベルにはそのことが必ず書かれています。例えば「ボルドー地方で詰められたワインです」とか「〇〇シャトー詰めです」とか。

南仏のカマルグという辺りのシャトーを訪ねたことがあります。フランスでもこの辺りでは米作りが盛んで、湿地にいるピンクのフラミンゴの大群に驚いたことを覚えています。ヨーロッパのワインはキリスト教との関係もあって、私達が思っている以上に生活に密着した大切なものです。また、低く育てられたブドウの木の畑はフランスやイタリアの独特の風景をつくっています。

南仏の山あいのある小さな村。宿泊した宿のご主人の運転でロマネスク様式の教会を訪ねました。途中長女がぐずったのでしょう。車を停めたご主人は道端のブドウ畑からいくつかブドウをもぎ取り、長女の口に運んだことが思い出されます。

ショック! 牛久シャトーが営業中止

ところで、日本で最初にできたシャトー。そう牛久シャトーです。誰もが耳を疑いましたが、年内をもってレストランやお土産物売り場の営業をやめるということ。赤字が原因とかなんとか。これからどうする、なんとかならないの―SNS上では大きな話題に。なにせ牛久の目玉ですから。しかし同時に1企業ですから。

以前、牛久駅の西口を「かっぱ口」に、東口を「シャトー口」にしたい、そこで、シャトーの建物を駅の階段などにサインとして使いたいので、デザインしてもらえないか―と依頼されたことがあります。

そのとき問題となったのが、シャトーは1企業であって、それをパブリックなサインとして使うのはいかがなものかと。結局、それ以外の選択肢がないわけで、「シャトー口」のサインは駅の階段に使われています。また、友人がデザインした小型バイクのご当地ナンバーにも、1企業であるシャトーが描かれました。

というわけで、市としてもお困りと思いますが、重要文化財に指定され、ワイン醸造所として日本遺産登録を目指していたシャトー。森とんかつ、いずみニンニク、かこんぴら、まれ天ぷら…。静かに眠る牛久シャトーの復活を信じております。(画家)