金曜日, 3月 29, 2024
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筑波大 病院 -検索結果

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4億円超調達しアプリ販売 筑波大出身医師、在宅・遠隔医療で切り込む

【相澤冬樹】医療相談アプリ「リーバー(LEBER)」を開発し、法人向けサービスに乗り出したアグリー(AGRIE、つくば市谷田部)社が3億円を目標にした資金調達で、今月末までに4億円超えを達成、売り上げ20億円を目指す戦略が整った。29日、つくばスタートアップパーク(同市吾妻)で開催のつくばイノベーション・リーダース・ミーティングの会合で、講演した伊藤俊一郎社長(40)自らが明らかにした。病院への外来と入院に大きく依存した現代日本の医療体制に、在宅・遠隔医療で切り込もうとする同社の有力な“メス”になりそうだ。 リーバーはスマホを操作して医師と相談するアプリ。ユーザーは「痛い」「かゆい」などの症状を伝え、必要に応じ写真などに撮って送付するチャットスタイルで、自動問診に答える。これを見た医師が最速3分で診断結果を伝え、最寄りの医療機関や適切な市販薬などをアドバイスする仕組み。24時間365日相談でき、110人以上の医師、45以上の診療科で対応するという。 同社ではこれまで、アプリ開発と共に実証実験を行ってきた。2018年の調査では、3052人の相談者中、77%が「不安が減った」と答え、医師による回答は88%が「分かりやすかった」とした。相談の結果、60%が「病院に行かずに済んだ」ということだ。 この結果から同社は、アプリの販売に乗り出すことを決め、まず法人向けサービスから着手、昨年から3億円を目標に資金調達に乗り出した。これまでに地元地銀のほか、東京の大手印刷会社、インターネット関連企業などが出資に応じ、今月末までに4億円を超えての達成見通しになった。 若いスマホ世代と子供たちターゲット 講演では、「病院に行くのが難しい高齢者はスマホが操作できないものが多い。どう対応するか」の質問があった。伊藤社長は「現段階では高齢者は想定していない。多種の治療薬を服用しているため、相談アプリでは合併症などが懸念される」と、主に若いスマホ世代とその子供たちの利用を想定しているという。 医療難民となりがちな高齢者に対しては、在宅医療の展開がカギになる。アグリー社などを束ねるメドアグリケアグループでは、県内外7拠点で訪問診療・看護、リハビリ、入院治療を行っている。伊藤社長は筑波大学出身の心臓外科医で、2015年6月につくばみらい市にメドアグリクリニックを開院。昨年12月にはかすみがうら市に有料老人ホームのアグリケアガーデンかすみがうらを開設するなどしている。 17年度にはつくば市の「つくばソサエティ(Society)5.0社会実装トライアル事業」に、18年度には内閣府「近未来技術等社会実装事業」に採択。医療系ベンチャーとして注目されている。「日本は病院数こそ世界一だが、医師数があまりに少なく、医師の過重労働や医療費の増大を招いている。病院依存の外来診療、入院治療と役割分担する第3、第4の医療が必要」が伊藤社長の持論。5年後には在宅医療と遠隔医療が大きなウエートを占めるだろうと予見し、起業や就労を待っている分野だと強調した。 つくばイノベーション・リーダース・ミーティングは、若者や学生などに「つくばの起業家と夢を語る」機会として設けるもので、29日の開催が第1回だった。次回開催は2月26日、筑波大学システム情報系、鈴木健嗣教授による「サイエンスの勝利」が予定されている。問い合わせは、つくばグローバル・イノベーション推進機構(電話029-869-8034)

【筑波大、26年ぶりの箱根路】㊤ 伝統校復活へ 私学に迫る強化策

【池田充雄】筑波大学陸上競技部が、来年1月2、3日に開かれる第96回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)に、26年ぶり61回目の出場を決めた。筑波大の前身である東京高等師範学校は、箱根駅伝の創始者として知られる“いだてん”金栗四三の母校で、1920年の第1回大会の優勝校でもある。だが近年は私大勢に押され、四半世紀も出場が途絶えていた。名門復活はいかにして成し遂げられたのか。 大会100年の節目に復活 悲願が成就したのは10月26日の予選会。参加34校から各12人がハーフマラソンを走り、上位10人の合計タイムで競う。10位以内なら本選出場となるが、これに筑波大は6位というサプライズ。弘山勉監督は「チームを箱根に引き戻すことができた。100年目の大会での復活は感慨深い。監督という立場を超え、OBとして純粋にうれしい」と語る。 箱根駅伝への出場自体は94年の第70回大会以来だが、このときは記念大会として予選会11位まで出場枠が拡大された結果。自力で勝ち取った出場権となると、弘山監督が選手として走った89年の第65回大会にまでさかのぼる。 筑波大は2011年に「箱根駅伝復活プロジェクト」をスタート。15年に弘山監督を迎え、以来5年間で予選会の成績は毎年アップ、今回の快挙につながった。ライバルとなる私大各校とは資金力、選手力、練習量などで大きな差があったはずだが、それらをどう克服していったのか。 環境改善へクラウドファンディング まずは資金力の問題。国公立大学では私立大のような潤沢な強化費は望みようもない。そこで16年からクラウドファンディングを開始。得られた支援金を練習のサポートや食住環境の整備に充ててきた。「予想以上の反響に驚いている。これだけ多くの人に期待されているということ。お金がないと得られない環境はあるので、うまく力に変えていきたい」と弘山監督。 一例が、選手アパートでの食事の改善だ。以前は選手が回り持ちで調理当番をしていたが、そのため練習を早上がりしなくてはならず、体のケアもままならなかった。今は夕食を管理栄養士に任せ、選手のストレスが軽減。メニューの種類やバランスも向上している。 「合宿でも20人が行くと1回で100万円からかかる。それらを補助してもらえるのは大きい。私学との環境の差はどれくらいあるか分からないが、確実に縮まっていると思う」と上迫彬岳主務。 「勉強も箱根も狙える」大学 選手力の差を縮めたのは「復活プロジェクト」の影響が大きい。箱根を本気で目指せる大学という認知が広がり、入学してくる選手のレベルも高まった。「勉強も駅伝も続けられる大学。プロジェクトに引かれ、筑波で箱根を目指そうと入学した」と話す大土手嵩主将(3年)もその一人だ。医学群の川瀬宙夢(5年)は解剖実習や病院実習をこなしながら、猿橋拓己(3年)は理工学群で都市計画を学びながら、チームの主力として箱根に挑む。 金丸逸樹(4年、諫早高)や、相馬崇史(3年、佐久長聖高)ら、高校駅伝の名門校の出身者も増えた。「箱根を走るような高いレベルを知っている選手が今の世代にはそろった。それだけに、箱根と自分たちとの距離感もよく分かっている」と上迫主務。 選手層だけでなく指導陣も手厚くなった。一昨年までは弘山監督が一人で練習から渉外、広報まで全部こなしていたが、今はアシスタントコーチらが付き、選手の状態を逐次把握している。 これらの成果が出始め、弘山監督は「今年は明らかにチャンスの年」と手応えを感じていた。1月の第95回箱根駅伝では、相馬が関東学連の一員として5区を走り、その姿を見た選手たちの間にも「ここで自分たちのタスキをつなぎたい」との機運が高まった。だが、実際に戦えるチームになるまでには、まだ大きな壁もあった。(㊦に続く)

つくば市春日消防本部跡に患者宿泊施設や市児童発達支援センター 筑波大がPFIで検討

【鈴木宏子】筑波大学附属病院南側に隣接する、つくば市春日消防本部跡地(同市春日)約8200平方メートルを、同大がつくば市から賃借して、PFI(民間資金活用による社会資本整備)により医療複合施設の建設を検討している。3日開かれた市議会全員協議会で報告された。 同大によると、患者や家族のための宿泊施設や、つくば市による児童発達支援センター、民間の保健施設のほか収益施設の開設が検討されている。規模などは現時点で未定だが、おおむね2022年夏ごろまでの完成を目指しているという。 春日消防本部跡地は、市消防本部が2015年3月、研究学園の市役所隣りに移転した後、使われなくなった。一部が今年5月まで、水素ステーションや職員駐車場などとして利用されてきた。現在、敷地内には2階建ての旧中央消防署と、3階建ての旧筑南消防本部の建物が残っているが、解体し、さら地にして、同大がPFIにより施設を新設する。 宿泊施設は、同大附属病院の患者に限定せず、主に患者と患者家族が利用できるようにする。 つくば市が新施設内に入居して開設予定の児童発達支援センターは、発達の遅れや障害のある子供たちが通所して、日常生活の基本動作などの指導を受けたりする施設で、家族を支援したり、保育所などを訪問して支援する。同大附属病院と隣接することから、連携して事業を実施していく。切れ目のない支援体制を整備するため保健センターの母子部門や教育局相談部門の併設も検討する。 同跡地の利活用については、2017年11月に筑波大から市に利用計画が出され、市は18年から有識者や障害者団体関係者による「児童発達支援センターの在り方検討会」を設置して在り方や開設場所などを検討してきた。今年7月に提言が出され、市は賛成が最も多かった春日消防本部跡地に設置する方針だ。 今後は、12月中に市と筑波大が協定を締結、来年1月に市が住民説明会を開催する。3月には同大が実施方針を公表、4月に同大はPFI事業者の選定手続きを開始する予定。

依存症当事者が体験語る 29日、筑波大の大村研究室が主催

【山口和紀】アルコールおよび薬物依存症の当事者で、現在、依存症回復支援施設の生活支援員を務める渡邊洋次郎さんが29日、つくば市天久保のコワーキングスペース、つくばプレイスラボで体験談を語る。筑波大学人間系の大村美保助教が「当事者と共にある支援」を学びとってもらいたいと開催する。 大村助教は、犯罪や非行をしてしまった人の支援に関わっており、3、4年前から渡邊さんと交流を続けている。昨年、研究室の学生と、渡邊さんの勤める回復支援施設「リカバリハウスいちご」(大阪市)を訪れた。当事者同士のミーティングなどを見学し、当事者自身の回復に向けた姿勢など多くを学んだ。 大学の授業では“支援する”側の支援は多く教えられるが、“支援される”側の視点が語られることは少ないという。『当事者とともに』という視点を講演会の中で学びとってもらいたい、が開催の主旨になった。 「自分なりに頑張ろうとした結果」 渡邊さんは、中学生の頃からシンナーを使用し始めた。幼少期から周りになじめず、学校でも勉強についていけず、常に寂しさを感じていたという。そんな中、中学生のときにシンナーや万引きなどの非行に走った。理由は「誰もやらないようなことをやれば周りから注目されるからだった」と語る。 中学卒業後は、少年鑑別所に4回、少年刑務所には1年間入った。18歳からホストを始めるも仕事上、強い酒を飲むことも多く、アルコールへの依存も始まる。30歳前半まで精神科病院で入退院を繰り返した。その後、刑務所に3年入所する。 自分が回復に向かって努力しなければならないということにやっと気づいたのは30代の後半になってからだという。 渡邊さんにとって依存症は「異常なこと」ではなかった。むしろ自分なりに普通になろうとして頑張った結果だったと振り返る。社会的には薬物は危険であるというイメージがあるが、普通の生活の延長にあったと語る。 講演会では「薬物依存症」というカテゴリーにとらわれることなく、1人の人間としての姿を伝えたいと話した。 ◆講演会は29日11時から16時まで。参加費は無料(弁当代500円)。予約は25日まで下記URLから行っている。 問い合わせは主催の筑波大学人間学群障害科学類 大村研究室まで(omuralab@gmail.com)。参加申し込みはこちらから

土浦一高1、2年生が病院訪問 医学コース設置見据え

【山崎実】県立土浦一高(土浦市真鍋)は、医学部進学研究会(医学研)活動の一環として、1、2年生の病院訪問を実施する。 医学研は、同校が筑波大学や水戸協同病院などの協力の下、病院見学、出前授業などを通して、医学部進学志望生徒に対し、医師になるための志を育むことを目標に、独自に取り組んでいる。今年度は、来年度からの第2学年「医学コース」設置を見据え、第1学年も実施する。 病院訪問は、第1学年医学研が16日、1年生48人が土浦協同病院(同市おおつ野)を訪れ、オリエンテーション、病院内見学、実習、研修医との懇談などを行う。 次いで、第2学年医学研は20日、2年生20人が水戸協同病院(同市宮町)を訪問。カンファレンス見学、院長講話、病院内見学、研修医との懇談などを通し、医療現場や医師としての在り方などを学ぶ。 県は、医療後進県からの脱却―特に、医師不足解消に全力を傾けており、同校医学研の活動が注目される。 ➡土浦一高に関する過去記事はこちら

医療と介護のデータ200万件 つくば市が筑波大に託す

【鈴木宏子】つくば市が、過去5年分の医療と介護の報酬明細書(レセプト)データ約200万件を、筑波大学ヘルスサービス開発研究センター(つくば市天王台、田宮菜奈子センター長)に提供し、同センターがデータを分析して、効率的な医療と介護政策の検討に役立てる組みが始まる。 同市と同大が1日、医療介護分野のデータ解析に関する覚書を交わし、取り組みがスタートした。 市が提供するのは、国民健康保険加入者や75歳以上の後期高齢者医療制度加入者の診療報酬明細書(医療レセプト)と、介護保険給付費明細書(介護レセプト)など、年間40万件に及ぶ医療と介護のレセプト。2014~18年度の5年分計約200万件を、個人情報が特定できないよう匿名化して同センターに提供する。 センターは、医療と介護のレセプトを連結させてデータ分析し、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、効率的な地域包括ケアシステムづくりに生かす。 これまで同センターは、千葉県柏市のデータを2014年から分析し、高齢者が太ももを骨折した場合にかかる医療と介護の費用を日本で初めて算出したり、特別養護老人ホームと介護老人保健施設を比較し、入所後に、症状が悪化し病院に入院する割合が異なることを突き止めた。 つくば市のデータについては、どの観点からどのように分析するかはこれから検討する。例えば、退院後に、訪問看護サービスを受けていた高齢者と受けていなかった高齢者を比較して、サービスを受けていた高齢者の方が再入院する割合が少なかったとすれば、予防の観点から政策に反映させることができる。高齢者施設によって、入所後の高齢者の体調や体の機能維持の割合が異なれば、ケアの在り方を再検討することもできるという。 同センターの田宮センター長はこれまでも、つくば市の高齢者福祉計画策定や在宅医療・介護連携推進協議会に携わってきた。新たなデータの分析結果は、毎年、進ちょくに合わせて市に報告し、市の政策に生かす。 田宮センター長は「モデル的な分析をして、地域に根差した包括ケアシステム構築を市と協働し進めていきたい」と述べ、五十嵐市長は「レセプトをどう活用するかは行政にノウハウがない。医療と介護を組み合わせて本当に必要なサービスを検討することができれば大きな意義がある」などと話した。

スマートシティの先の未来のつくば語る 筑波大教授と県局長が講演 筑協総会

【鈴木宏子】つくばの研究機関や民間研究所などで構成する産官学の交流組織「筑波研究学園都市交流協議会」(事務局・文科省研究交流センター)の2019年度総会が28日、同市竹園の同交流センターで開かれた。つくばが国交省の先行モデルに採択された「スマートシティ」をテーマに、今年度から実際に実証実験に取り組む筑波大学システム情報工学研究科長の大沢義明教授と、けん引役の県産業戦略部技術振興局の飯塚一政局長がそれぞれ講演し、スマートシティの先の未来のつくばの姿を語った。 大沢教授は、同大とトヨタがこれまで取り組んできた共同研究の成果を話し、車に搭載されたセンサーなどの情報を収集・分析して、周辺の道路状況を把握したり、災害復旧支援などに活用する近未来の地域社会の姿を語った。 今年度からつくばで始まるスマートシティ先行モデル事業の実証実験の中身も紹介した。筑波大学を行き来する路線バスで、顔認証によるキャッシュレス決済を行うほか、公共交通と医療サービスをつないで、バスに乗った人が顔認証により筑波大附属病院の受診受付や診療費の支払いなどを一括して行えるようにする。さらに排気ガスの心配がない水素燃料電池の路線バスや救急車を運行して、病院の建物の中に直接入る実証実験なども計画しているという。大沢教授は「つくばで日本版スマートシティを実現したい」と意欲を語った。 大沢教授はほかに、車の走行台数と駐車場空きスペースなどさまざまな情報を最適にマッチングさせることで、鹿島アントラーズ試合開催日のサッカースタジアム周辺の渋滞解消や、ゴールデンウイークや紅葉シーズンの筑波山周辺の渋滞解消などに取り組む計画があるという。 県の飯塚局長は、つくばが、国交省のスマートシティモデル事業と新モビリティサービス推進事業の二つの先行モデルに選ばれたことを強調し、その先に「まるごと未来都市」と呼ばれるスーパーシティがあるなどと未来のつくばを話した。 ➡スマートシティ採択に関する関連記事はこちら

スイス女子陸上チーム 筑波大で事前合宿 横浜世界リレー出場へ

【鈴木宏子】筑波大学(つくば市天王台)で3日から、陸上競技のスイス女子リレーチームが大会前のトレーニングキャンプを張っている。来年の東京オリンピックで同大はスイスの事前キャンプ地になり、つくば市は同国のホストタウンになる。来年の本番を前に、スイスオリンピック協会と同大、つくば市、県の4者が昨年4月に締結した基本合意に基づいて初めて選手団を受け入れた。 チームは4×400メートルに出場するリレー選手6人と監督、コーチなど。9日までつくば市内のホテルに宿泊しながら同大陸上競技場などで調整を続け、11、12日に横浜で開催される「国際陸上競技連盟(JAAF)世界リレー2019横浜大会」に挑む。7日午前、同陸上競技場で公開練習が行われ、選手らは入念にストレッチをしたり、軽く走るなどして体を慣らした。 キャンプでは、同大の学生ボランティア11人が交代で選手らに付き添いサポートをしている。さらにスーパーカスミから食材の提供を受けて、同大体育科学系運動栄養学の学生らが、アスリートのための食事を手作りし、ふるまっているという。ホテルや移動手段の手配はつくば市が支援している。 7日、練習会場を訪れた同大の永田恭介学長は「大学には施設だけでなく、附属病院のスポーツ医学・健康科学センターや運動栄養を研究し食事をサポートするスタッフがそろっている。選手たちが本番で力を出せるよう支援していきたい。学生ボランティアにとっても世界トップレベルの選手の姿を間近で見ることができる機会になる」などと語り、五十嵐立青つくば市長は「選手が万全の状態で戦えるよう環境をつくっていきたい。いろいろな形の交流の機会が広がっていけば」と話した。 チームは現在、世界ランク26位(2018年)。横浜大会で10位以内に入り、さらに9、10月にドーハ(カタール)で開かれる世界陸上で8位以内に入れば、東京オリンピックの出場が決まるという。ピーター・ハース監督は「温かく迎えてくれ、数々のもてなしに感謝している。アスリートたちは来年の東京オリンピックを目指して頑張っている」などと語った。キャプテンのレア・スプンジャー選手は「チームはとてもいい雰囲気でコンディションもいい。スイスからの長いフライトから1、2日で体調を整えることができたのは温かい歓迎とサポートのおかげ。東京オリンピック出場を目指している。来年ここに戻ってきたい」と話していた。

防災ヘリ 7月から医師乗せ補完運航 つくば・土浦の3病院がチーム組織

【山崎実】県は今夏の7月から、ドクターヘリの補完的運航として、医師及び看護師(医療チーム)を乗せた防災ヘリの運航を開始する。 既に昨年10月からドクターヘリの搭乗訓練(OJT)、防災ヘリ搭乗訓練等を実施している。重複要請等でドクターヘリが出勤できない場合、防災ヘリが医療チームを乗せて救急現場に向かい、速やかに治療を行い、救命率向上を図るのが狙い。 補完運航に先立ち、県は2月、この運航に協力して医療チームを組織、提供する土浦協同病院(土浦市、酒井義法病院長)、筑波大附属病院(つくば市、原晃病院長)、筑波メディカルセンター病院(同、軸屋智昭病院長)の3病院と「防災ヘリによる補完的運航に関する協定」を締結した。 これにより、防災ヘリに出勤要請があれば、防災航空隊基地(つくば市上境)から医療チーム提供3病院のいずれかの病院ヘリポートに立ち寄り、チームを乗せ現場に急行する。 2010年7月、水戸済生会総合病院(水戸市)と、水戸医療センター(茨城町)の2病院を拠点として運航を開始した現行のドクターヘリは、出動要請が年々増加し、重複要請から対応できないケースが目立っている。 県医療政策課のドクターヘリ運航実績によると、2010年度から17年度までの総出動件数は7079件、年度別では10年度の362件から17年度には1147件と3倍以上に急増。さらに重複要請も20件から8倍弱の156件に増え、全体では588件に上る。 防災ヘリをドクターヘリの補完として運航させることについて大井川和彦知事は、第1回定例県議会で県議の質問に「重複要請で(ドクターヘリが)出動できない場合や、多数の傷病者が出た際などに、防災ヘリが協力病院から医師と看護師を搭乗させ、救急現場に向かう体制が確立する。1人でも多くの県民の命を救うため、運航体制の充実、医療提供体制の強化に全力で取り組みたい」と、その意義を強調した。 ドクターヘリは、県境を超え、栃木、福島両県と相互に要請・利用できる体制を構築しているほか、千葉県のドクターヘリとも共同利用している。防災ヘリの補完的運航が、ドクターヘリの重複要請の負担軽減につながることは間違いなく、自治体関係者などからも「医療過疎地域にとっては心強い朗報」と、早期運航に期待している。 茨城県ドクターヘリ運航実績 年度 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 計 総要請件数 362 724 1090 956 986 884 930 1147 7079 出動件数 289 581 852 703 672 628 678 728 5131 未出動件数のうち重複要請 20 37 76 53 94 57 95 156 588

【ひと】飲酒量低減外来を開設 筑波大学 吉本尚准教授

【田中めぐみ】筑波大学との連携で1月半ば、北茨城市民病院付属家庭医療センター(同市中郷町)内に飲酒の悩みを抱えている人を対象にした「飲酒量低減外来」が開設された。精神科以外での飲酒専門外来の開設は全国で初めて。毎週木曜日午前中に同大医学医療系の吉本尚准教授ら総合診療医が診察する。反響は大きく、開設して約3週間、予約はほぼいっぱいの状況だという。 北茨城市は筑波大と地域医療で連携しており、同大は総合診療、家庭医療の専門医教育の一環として、同センターで研修や実習を行っている。同外来は飲酒量が多い人や軽度のアルコール依存症の人などが対象。飲酒習慣について質問票で調査した上で、カウンセリングをするほか、場合によっては薬物治療も行い、一人ひとりに合った飲酒量を考えていく。診療で治験を集め、今後つくば・土浦市内、ひいては全国にも取り組みを広めていければとの考えだ。 吉本准教授によると、国内にはアルコール依存症が100万人いるとされているが、医療機関を受診している人は4~5万人。アルコール依存症の診療は従来、精神科や心療内科の領域であるため、受診をためらってしまうことが原因の一つとみられる。「アルコールの問題で悩んでいる人は想像以上に多い。悩んでいる人がもっと気軽に受診できるよう、新しい取り組みにチャレンジできないかと考え、飲酒量低減外来を開設した」と話す。 厚生労働省が「節度ある適度な飲酒」としている量は、ビールなら男性で500ミリリットル、女性や高齢者はその半分。吉本准教授らが関東の31大学の学生533人を対象に調査したところ、飲み放題のサービスがある店では、飲み放題でない店よりも飲酒量が2倍近く増える傾向があるという。また関東の大学生2177人を調査したところ、男性では2時間で1缶500ミリリットルのビールを2本半、女性では2本飲むと、けがのリスクが25.6倍になったという。海外では飲み放題の規制をしている国もある。 アルコール・うつ・自殺は関連が深く、「死のトライアングル」と呼ばれている。吉本准教授は「最近は芸能界やスポーツ業界などでも、お酒に関係する事件の報道がされて話題になっており、お酒との付き合い方は難しいと感じる」そうだ。「『自分は飲み過ぎではないか』『飲む量を減らしたい』など、飲酒のことで気になること、困りごとがあればなんでも気軽に相談してほしい。本人だけでなく、家族の相談でもかまわない。体、心の害が出ないようにお酒とうまく付き合える支援をしていきたい」と話している。 [吉本尚(よしもと・ひさし)]北海道出身、筑波大卒、医学博士。2014年に母校に戻り、18年から医学医療系地域総合診療医学准教授、総合診療に関わる医師の在り方を提案している。 ◆北茨城市民病院付属家庭医療センターは予約制で1日3人まで。電話0293-43-1131 ◆飲酒に関する相談は同センターのほか、筑波大学付属病院総合診療グループ。電話029-853-3189

認知症は予防できる! 筑波大の内田准教授が早期発見の検査法開発 普及へ

【田中めぐみ】認知症は予防できるという。筑波大学医学医療系の内田和彦准教授らのグループが、簡単な血液検査によって軽度認知障害(MCI)のリスクが判定できることを発見した。この検査法は内田准教授が社長を務める同大発ベンチャーMCBI(つくば市吾妻)で実用化、全国の医療機関で検査が可能になった。 検査は7㏄の採血のみで、2~3週間で結果が出る。判別精度は90%。健康保険適用外の自費診療で料金は2万円ほど。内田准教授は認知症の予防につなげる新しい検査法として普及させたい考えだ。 軽度認知障害は、もの忘れが目立つなど認知機能の低下はあるものの、日常生活には支障が出ていない状態で、認知症の前段階を指す。軽度認知障害の約40%が4年後に認知症を発症するといわれており、要注意の段階だ。しかし定期的に血液検査を行い、早い段階で発見できれば、生活習慣の改善で回復が可能だという。 3種類のタンパク質濃度を検査 アルツハイマー型認知症は、アミロイドβ(ベータ)タンパク質という物質が脳内に蓄積し、正常な神経細胞に障害を与えることで発症すると考えられている。アミロイドβは誰の脳にも存在するが、蓄積しないよう排出する機能が備わっている。 認知症を発症する人は排出機能が低下しており、徐々にアミロイドβが脳内に蓄積される。排出には3種類のタンパク質が必要だが、軽度認知障害の人は、この除去に働く3種類の血中量が健常者に比べて低く、排出機能低下につながっていると考えられている。血液検査ではアミロイドβを排出に関わる3種類のたんぱく質の血中量を測ることで。軽度認知障害のリスクを判定するという。(上図参照) 予防や治療について、内田准教授に話を聞いた。 治療は生活習慣病と同じ ―どういった場合に検査をすればよいでしょうか。 内田 日常生活に支障がなくても、物忘れが多い、言葉が出てきにくいなど、本人やご家族が少しでも気になったら専門医に受診するとよいでしょう。全国1300件以上の医療機関で検査が受けられます。早期発見すれば予防効果も高いです。 ―検査で軽度認知障害のリスクがあると分かったらどうしたらよいでしょうか。 内田 リスクがあると分かっても怖がる必要はありません。予防ができるので回復のチャンスです。軽度認知障害の治療は生活習慣病の治療と同じです。中年期では生活習慣の改善が大切で、特に運動は効果があります。食事は高タンパクで良質の脂質を取ること。また、良質な睡眠を充分に取ることも大事です。高血圧や糖尿病の人はきちんと治療をし、コントロールします。適正体重を維持することも必要です。 65歳以上の高齢期はしっかり食べて栄養を取り、仕事を辞めても社会との接点をなくさないことが大切。筋トレやウォーキングなどの有酸素運動も重要です。エレベーターを使わずに階段を使って移動するのもいいでしょう。 ―軽度認知障害の治療はどのようなものでしょう。 内田 治療というと薬と思われがちですが、治療は薬だけではありません。食事療法、運動療法、芸術療法、すべてが治療です。物を見て絵を描く、粘土で造形する、歌を歌う、脳トレ、ダンスなども効果があります。また、緑茶を飲む習慣がある人も認知症を発症しにくいという報告もあります。 ―今後の研究の展望は。 内田 より多くの症例を用いて臨床研究していきます。また、運動と抹茶を飲むことの継続がどのような効果をもたらすのか、血液検査と合わせて研究していく予定です。筑波大学では軽度認知障害と診断された人たちを対象に「認知力アップデイケア」というプログラムを設けています。またMCBIでは「頭のかんたん健康チェック」というイベントも開催しており、抹茶を飲んで認知症予防する臨床研究のご案内をしています。興味のある方はぜひ参加していただきたいと思います。 ◆認知症予防セミナー「頭のかんたん健康チェック~抹茶で認知症予防しませんか?~」は2月、取手・守谷地区で開催。▽19日午前10時~12時=取手市福祉交流センター▽22日午前10~12時=サンシャイン・ヴィラ守谷倶楽夢。参加は無料。楽しく簡単に誰でもできる認知症予防チェックと講演のほか個別相談会も行われる。問い合わせは電話029-899-4431(MCBI)https://mcbi.co.jp/ ◆筑波大学附属病院 認知力アップデイケアのホームページはhttp://www.tsukuba-psychiatry.com/dc/

土浦協同など5病院が充足 来春の研修医マッチング

【山崎実】土浦協同病院など県内の5医療機関が、来春からの臨床研修医マッチングで、充足率(募集定員に対する確保人数)を満たしたことが厚生労働省のまとめで分かった。茨城県は人口10万人当たりの医師数が全国ワースト2位(2016年)と医療後進県。脱却をめざす県にとって、研修医確保枠の達成は必須条件の一つだ。 医師臨床研修マッチングは2004年度、医師の臨床研修が義務化されたことに伴い導入された。日本医師会、全国医学部長病院長会議など臨床研修を行う病院等の団体で構成する「医師臨床研修マッチング協議会」(東京都港区)が、医学生と病院のプログラムを相互の希望を踏まえ、一定の規則(アルゴリズム)に従ってコンピューターにより組み合わせを探り、確定するシステムとなっている。 調査結果によると、県内の研修指定参加20病院の募集定員は228人。これに対し、マッチングによる確保人数は169人で、充足率は74.1%(前年度は74.3%)だった。臨床研修医の県内受け入れは、13年度の126人から17年度は162人と確実に増え続けており、今回も過去最多を記録した。 受け入れ先を病院別に見てみると、筑波大学附属病院が前年度比6人増の73人で県内最多。ほかに水戸済生会総合病院(2人増)、水戸医療センター(4人増)、土浦協同病院(6人増)、霞ケ浦医療センター(1人増)、JAとりで総合医療センター(5人増)、茨城西南医療センター病院(2人増)の計7病院は前年度に比べ増加した。 さらに水戸医療(9人)、土浦協同(14人)、筑波メディカルセンター病院(10人)、JAとりで(5人)、茨城西南(6人)の5病院は募集定員枠を満たし注目される。一方、受け入れ内定がゼロだったのは、水戸赤十字病院、つくばセントラル病院、友愛記念病院の3病院だった。 県医療人材課は「病院間の人的交流も活発に行われており(枠確保未達成の病院があることが)不安材料とは考えていない。むしろ、県内へのマッチング者数の増加傾向を、さらに伸ばしていくことが重要」と話している。      2019年春採用の臨床研修医マッチング結果 募集定員 マッチング 前年度比マッチング増減 1 水戸赤十字病院(水戸市) 4 0 ▼4 2 水戸協同病院(水戸市) 10 7 ▼3 3 水戸済生会総合病院(水戸市) 10 8 2 4 水戸医療センター(茨城町) 9 9 4 5 茨城県立中央病院(笠間市) 9 4 ▼3 6 日立製作所日立総合病院(日立市) 12 9 ▼2 7 日立製作所ひたちなか総合病院(ひたちなか市) 8 7 0 8 土浦協同病院(土浦市) 14 14 6 9 霞ケ浦医療センター(土浦市) 3 1 1 10 筑波記念病院(つくば市) 8 6 ▼2 11 筑波大学附属病院(つくば市) 90 73 6 12 筑波メディカルセンター病院(つくば市) 10 10 0 13 筑波学園病院(つくば市) 5 1 ▼1 14 東京医科大学茨城医療センター(阿見町) 10 4 ▼4 15 牛久愛和総合病院(牛久市) 5 4 0 16 つくばセントラル病院(牛久市) 3 0 0 17 JAとりで総合医療センター(取手市) 5 5 5 18 総合守谷第一病院(守谷市) 3 1 0 19 友愛記念病院(古河市) 4 0 0 20 茨城西南医療センター病院(境町) 6 6 2 合計 228 169 7 ※20医療機関は県内の臨床研修医マッチング参加病院 ※定員に空席がある病院は今後2次募集を実施する

ゲーム通しつくば駅前に交流空間 筑波大生が月1回開催

【鈴木宏子】ゲーム好きの筑波大生が、つくば駅前に新たな交流空間を出現させている。駅前の商業施設BiViつくば2階の交流サロンで月1回開かれているゲーム会だ。まちなかの一角が、見知らぬ人同士、テーブルを囲んでカードゲームなどに興じる空間になる。 筑波大生4人でつくる「つくばテーブルゲーム=メモ=交流協会」が毎月1回、最終土曜日の午前10時30分から午後8時30分まで開催している。参加者は、会場の8つの丸テーブルを囲んで、居合わせた人とカードなどを使ったゲームを楽しむ。毎回40~50人が集まりテーブルはすぐに満杯になる。子ども連れの参加者もいて、市内のほか、水戸、鹿嶋市などからも集まる。 「10年後につくばをテーブルゲームのまちにしたい」と、代表を務める人文・文化学群比較文化学類4年、高野大さん(22)さんが、理工学学群・工学システム学類3年、亀沢和史さん(21)や人文・文化学群比較文化学類3年、福田哲郎さん(22)さんらに呼び掛けて2016年12月に発足させた。 「ルールが簡単なのでだれでもすぐに始められるし、初対面でも楽しめる。子供も、学生も、社会人も一緒に楽しめるし、留学生など日本語がうまくしゃべれない人とも遊べる」と福田さんはいう。 「つくばはいろいろな人が移り住んで、出てゆくまちなので、ゲームを通して人と人が出会えれば」と高野さん。「テーブルゲームはつくばのまちの特性を生かせる魅力的なコミュニケーションツールになる」と強調する。 カードやボードを使ったゲームは100種類ほどあり、自宅からゲームを持参したり、新しいゲームを考案する参加者もいるという。 ほかに同大近くのコワーキングスペース(事務所スペース)「つくばプレイスラボ」や、同大留学生らの宿舎「グローバルビレッジ」などでも開催。市内各所で年間40回ほど開いているという。3月17日にはカスミのフードスクエア学園店(つくば市竹園2丁目)の飲食ができるイートインスペースで初めてゲーム会を開く予定だ。 「将来、銀行や郵便局、病院などの待合室にもテーブルゲームが置いてあって、待ち時間にだれでも楽しめるようなまちになったらうれしい」と高野さんは話す。 ※メモ 【テーブルゲーム】参加者がテーブルを囲んで行うゲームの総称で、トランプや絵札などを使ったカードゲームや、盤と駒を使ったすごろくなどのボードゲームなどがある。

つくばでハンセン病記録の上映会を開く元教員、村井さとみさん【ひと】

「命が大事にされる社会に」 筑波大学学生の村井さとみさん(58)が15日、つくば市内で、ハンセン病患者と家族の記録映像 上映会を開催する。大阪府泉佐野市で小学校教員を務めていたが早期退職し、昨年4月つくば市に転居してきた。現在、科目履修生として同大情報学群 知識情報図書館学類で図書館の経営や情報について学ぶ。 現場に行き、自分で考えたいと、教職の傍ら、ライフワークとして国内や海外の図書館と、原発、ハンセン病療養所を巡ってきた。小学校教員3年目に自身の身に起こったうつ病と2020年のコロナ禍の経験から、ハンセン病の問題に関心を持ち、患者たちの気持ちを自分ごととして考えるようになった。 上映するのは、東日本大震災直後、いちはやく福島県に入り福島原発事故の放射能汚染地図を作成した放射線衛生学者の木村真三さんが、ハンセン病患者だった親族の存在を偶然知り、記録を探し、過去を掘り起こしていくドキュメンタリーだ。 村井さんは「衝撃を受け、多くの人に伝え一緒に考えたいと思った。ハンセン病への差別や偏見は私たち一人一人の心の中にあり、いろいろな社会問題の根っこにつながり、命を軽視することにつながっていると思う。すべての命が大事にされる社会への一歩として上映会を開きたい」と話す。 うつ病、コロナ禍経験し、孤独や孤立を考えた 村井さんは徳島県出身。愛媛大学を卒業後、中学と高校で理科教員を務めた。結婚をきっかけに退職し専業主婦に。子育てが一段落して大阪の小学校教員に復職した。 学生時代にチェルノブイリ原発事故が起こり、原発に関するさまざまな本を読んだ。子育て中は絵本や児童書に興味をもち、司書の資格を取得した。 小学校教員に戻って3年目。学級崩壊と保護者からのクレームに加え、離婚など家族の問題が重なり、うつ病を発症した。1年近く休職した中、独りぼっちだと感じ、孤独について考え、ボランティアでハンセン病の療養施設に通う友人のことを思い出すなどした。 復職後、東日本大震災が発生。「それまでは本を読むだけで自分の生活を優先していたが、もっと考えないといけない」と、旅先で各地の原発を巡るようになった。 2020年、新型コロナが流行、大型客船で患者が集団発生したニュースが連日伝えられる中、村井さんにも、息苦しさやだるさなどの症状が現れた。学校を休み、検査を受けたいと保健所や病院に電話をしたが、熱が出なかったため断られ、しばらく自宅待機。自分が感染しているのか、いないのか分からない中、迷惑をかけて申し訳ないという気持ちと同時に、孤独と孤立を味わい、かつて本で読んだハンセン病患者の気持ちが分かった気がした。その後は旅先で、各地のハンセン病療養所を訪ねるようになった。 コロナ禍を経験し「人生、何が起こるか分からない」と、教員を早期退職。昨年4月、図書館学の分野で憧れだった筑波大学で学び始めた。つくばに転居後の昨年7月、群馬県草津町のハンセン病の療養所栗生楽泉園があった重監房資料館を訪ねた際、同館で見た学芸員制作のドキュメンタリーに衝撃を受けた。同館からDVDを借りて15日、つくばで上映会を開く。 村井さんは「ハンセン病の歴史を経験してもなお、コロナ禍で差別や偏見があった。立ち止まり、一緒に考える機会になれば」と話し、「上映会を第一歩として、その人がその人らしく、ありのままに生きていける、つながることができる場をつくりたい。大学では、北欧を例に、市民活動の拠点になっている図書館を研究テーマにしており、重なる部分がある」とも語る。(鈴木宏子) ◆上映会「仙太郎おじさん!貴方は確かにそこにいた 蘇るハンセン病患者とその遺族」は15日(金)午後1時~3時、つくば市天久保のBARKスタジオで開催。参加費500円。主催はPlace for lifeー命を守る」。詳しくはこちら。

つくバス減便を決定 4月から 土日祝日、最大で半減も

今年4月から運行本数が大きく削減されるつくば市のコミュニティバス「つくバス」について(23年11月8日付)、第3回市公共交通活性化協議会(会長・岡本直久筑波大教授)が18日開かれ、減便する便や時刻表の改正などを決定した。 減便の考え方としては、通勤や通学で利用されている平日の朝便と夜便を維持することを優先し、平日の昼間と土日祝日を減便するとしている。 現在は、平日と土日祝日いずれも共通の時刻表により10路線で317便を運行しているのに対し、4月からは時刻表を平日と土日祝日に分け、平日は全体で13.6%(43便)減便、土日祝日は32.8%(104便)減便とする。 4月から、バス運転手などの時間外労働の上限が規制されること、バス運転手不足の深刻化により規制を補う新たな運転手が確保できないことが減便の理由。 路線別では、平日で最も減便割合が大きいのは小田シャトルで26.7%減、最も小さいのは吉沼シャトルと茎崎シャトルでいずれも9.1%減となる。土日祝日ダイヤは最も減便割合が多いのは西部シャトルで50%減、最も減便の割合が少ないのは谷田部シャトルで26.7%減便となる。 始発便と最終便は、平日の始発便はほぼ維持されるが、最終便が繰り上がる便もあり、最大で小田シャトルと自由ケ丘シャトルは55分繰り上がる。土日祝日の始発便もほぼ維持されるが、最大で始発は西部シャトルが1時間30分遅くなり、最終便は最大で西部シャトルが3時間25分繰り上がる。 減便の実施により、つくバスの運転手は現在の1日53人体制から、4月以降は平日46人体制、土日祝日は34人体制になる。 今年度のつくバスの運行費用は年間約5億5000万円、運賃収入は約1億7500万円を見込んでいるが、減便により4月以降の運行費用は減額となる見込みという。 今後については、運行を委託している関東鉄道との運行契約が2026年3月末までとなっており、運転手不足が解消されなければ26年4月以降、さらなる減便を余儀なくされる見通しであることから、24、25年度2カ年かけて、関東鉄道と協議し、つくバスと路線バスが重複している路線の見直しなどを実施したいとしている。 常総、下妻と接続 ほかに、1日当たり平均利用者数が0.5人に満たないバス停留所が20カ所ある西部シャトルについて今年10月から、路線をみどりの駅発と万博記念公園発の二つに分割し、それぞれ道の駅常総とやすらぎの里しもつまに接続するほか、吉沼シャトルはやすらぎの里しもつまに接続することを検討していることが明らかにされた。 これに対し委員から「西部シャトルは利用者が極端に少ない。考えられる要因は何か。常総市と下妻市の道の駅などに接続するということだが、行った先の足を考えると常総線の駅を行き先にした方がいいのではないか」などの質問が出た。市は「西部シャトルは市の西側がバス空白地域だったことから2019年のダイヤ改編で走らせた。周辺の自治体からはつくば市内の病院に通院する人がいるという話もあり、周辺自治体との広域連携で新たな需要が確保できると思う。常総線の駅に接続する方がいいという話もあるが、ルートが伸びるので便数が減ってしまう」と答えていた。 筑波地域を運行する支線バス「つくばね号」については今年4月から、神郡東と館の停留所の1区間をフリー乗降区間とし、バス停以外でも乗降できるようにする。(鈴木宏子) ◆つくバスの4月からの新たな時刻表はつくば市ホームページへ。

「人口増加率 全国一」口々に つくばで4年ぶり賀詞交歓会

つくば市新春賀詞交歓会(同実行委員会主催)が10日、4年ぶりに市内のホテルで開催された。壇上であいさつに立った市長や国会議員などからは、元日に起こった能登半島地震の被災者に対するお見舞いや募金の呼び掛けに続いて、つくば市が昨年、人口増加率全国1位になった(23年7月26日付)ことを強調するあいさつが相次いだ。 市、市商工会、研究機関などでつくる筑波研究学園都市交流協議会、筑波大、市工業団地企業連絡協議会、JA、市金融団の7団体が実行委員会をつくり主催した。国会議員、県議、市議、商工関係者など約430人が参加した。コロナ禍により2020年以来、4年ぶりの開催となった。 同実行委員長を務める五十嵐立青市長は「総じて昨年1年間、つくばは前向きなニュースが多かった」とし、人口増加率が日本で1位、転入超過2年連続で1位になったことについて「具体的な数字としてつくば市が今、選ばれていることを示している」などと強調した。 続いて、年末に病院での当直明けに自転車に衝突され、おでこにばんそうこうを貼ってあいさつに立った国光あやの衆院議員は「つくば市は全国で一番人口が増えた、これはすばらしいこと。つくばからワンチームで、茨城、日本を変えるんだという意気込みで国政の立場からサポートしたい」と述べ、青山大人衆院議員は「たくさんの方がつくば市の魅力にひかれて移り住んでいる。つくば市の姿が本来、日本のあるべき姿ではないか」などと応じた。 市商工会の桜井姚会長は「つくば市で起業した人がコロナ禍でも1000人増えた。人材が豊富で、蓄積した研究成果への期待が大きいからだと思う。つくば市はますます発展しなきゃいけない」などと話し、乾杯の発声をして、歓談に移った。 この日、会場に用意された料理は、フードロスをなくすため前回に引き続き提供量を減らし、満足度の高まる内容にしたという。(鈴木宏子)

運転手不足で路線バスを減便 土浦、つくばなど8市町 関東鉄道 

12月20日から 平日8.5%減 県南地域などで路線バスを運行する関東鉄道(本社土浦市、松上英一郎社長)は21日、バス運転手不足が深刻化していることなどから、12月20日のダイヤ改正で路線バスの減便を実施すると発表した。 減便の対象は土浦、つくば、阿見、牛久、龍ケ崎、取手、守谷、常総の8市町を運行する32路線の49系統で、平日は総便数の8.5%に相当する235便を減便、土日祝日は6.1%の116便を減便する。 同社によると、利用者に比較的影響が少ない午前6時より前の便と、午後9時以降の便を中心に減便する。具体的にどの便が減便になり運行ダイヤがどう変わるかについては、12月14日までに同社のホームページやバス停、バス車内で知らせるとしている。 バス運転手がすでに不足しているほか、来年4月からバス運転手の時間外労働の上限が規制されるいわゆる「2024問題」などから、やむを得ず減便を実施するとしている。 一方、運転手確保について同社は、今年1月から新しい賃金体系を導入したり、入社祝い金、転居支援金の支給など積極的なバス運転手の採用に努めており、引き続き採用活動の強化に努め、労働条件の改善により離職を防止し、公共交通の維持に努めたいとしている。 バスの運行をめぐっては、つくば市のコミュニティバス「つくバス」についても来年4月から、運転手不足と時間外労働の上限規制により、運行本数を平日13.9%減便、土日祝日32.8%減便する方針が8日の同市公共交通活性化協議会に示されている(11月8日付)。 ▷12月20日から減便の対象になる路線バス32路線(49系統)のうち、土浦、つくば地区の路線は以下の18路線。・牛久駅~谷田部車庫~筑波大学病院線・牛久駅~森の里~緑が丘団地線・牛久駅~桜ケ丘団地~みどりの駅線・藤代駅~自由ケ丘団地線・取手駅~谷井田~谷田部車庫線・水海道駅~みどりの駅~土浦駅西口線・みどりの駅~学園並木~土浦駅西口線・みどりの駅~農林団地中央循環線・土浦駅西口~阿見坂下~阿見中央公民館線・土浦駅西口~補給処~荒川沖駅東口・土浦駅西口~小岩田循環線・土浦駅西口~烏山団地線・土浦駅西口~桜ニュータウン線・土浦駅西口~つくばセンター線・土浦駅東口~つくばセンター~つくばテクノパーク大穂線・荒川沖駅東口~県立医療大学線・荒川沖駅西口~つくばセンター線・ひたち野うしく駅~つくばセンター線

平日7分の1、土日祝3分の1減便へ 来年4月から つくバス

運転手の時間外労働 上限規制受け つくば市のコミュニティバス「つくバス」の運行本数が来年4月から、平日13.9%(44便)減便、土日祝日32.8%(104便)減便となる見通しであることが7日開かれた同市の第2回公共交通活性化協議会(会長・岡本直久筑波大教授)に報告された。全317便のうち平日は7分の1が減便、土日祝日は3分の1が減便となる。具体的にどの便が減便になるかなど運行ダイヤについては、来年1月開催予定の第3回協議会で確定する。市民生活への影響が大きいことから、確定後、直ちに市民に周知するとしている。 来年4月から、バス運転手などの時間外労働の上限が規制されること、運転手不足のため規制を補うだけの新たな運転手が確保できないことなどが減便の理由という。 同協議会委員で、つくバスを運行している関東鉄道は「路線バスもかなり厳しい状況で、現在(来年4月からの減便を)検討している。つくば市ばかりでなく、当社が(運行委託を)受けているコミュニティバスには同様の話をさせていただいている」とした。 市総合交通政策課によると、つくバスの運行に関し関東鉄道と締結している現在の契約が2025年度までとなっており、26年4月からは運転手不足によりさらなる減便の可能性があるという。市は24、25年度に運行路線の再検討に取り組むとしている。 筑波地区を運行する支線バス「つくばね号」は、運行時間が午前8時前から午後5時台、乗り合いタクシー「つくタク」は運行時間が午前9時台から午後4時台までとなっていることから、来年4月からの労働時間の上限規制の影響は受けない。 通勤、通学優先し日中と土日祝日を減便 7日の報告によると、運転手の長時間労働を防ぎ、安全を確保するため改正される労働時間の上限規制や休息時間の確保などにより、つくバスは、平日の運転手が7人減り、土日祝日の運転手が18人減る見込み。どの便を減便するかの考え方として市は、通勤や通学のための朝便と夜便を優先し、平日の日中と土日祝日の便を減便することで対応するとしている。(鈴木宏子) 各路線の減便本数の見通しは以下の通り。▽北部シャトル(つくばセンターから天久保、大穂などを通り筑波山口までを往復)は平日の上り下り併せて8便を減便し、土日祝日は上り下り計16便を減便▽小田シャトル(つくばセンターから春風台、大形などを通り筑波交流センターまでを往復)は平日は上り下り計8便減、土日祝日は計14便減。次の便まで平日の日中は最大2時間45分の間隔が空く▽作岡シャトル(研究学園駅から東光台、北部工業団地などを通り寺具までを往復)は平日上り下り計6便減、土日祝日は計12便減▽吉沼シャトル(研究学園駅から学園の森、大穂などを通りとよさと病院までを往復)は平日上り下り計2便減、土日祝日は計6便減▽上郷シャトル(つくばセンターから東光台、豊里の杜などを通りとよさと病院を往復)は平日上り下り計4便減、土日祝日は計6便減▽西部シャトル(みどりの駅から万博記念公園駅、上郷などを通りとよさと病院を往復)は平日上り下り計3便減、土日祝日は計10便減▽南部シャトル(つくばセンターから松代、農林団地などを通り茎崎老人福祉センターまでを往復)は平日上り下り6便減、土日祝日は計20便減▽谷田部シャトル(研究学園駅から島名、みどりの駅などを通り谷田部窓口センターまでを往復)は平日上り下り計3便減、土日祝日は計8便減▽自由ケ丘シャトル(みどりの駅から観音台、森の里団地などを経由し富士見台までを往復)は平日上り下り計2便減、土日祝日計6便減▽茎崎シャトル(富士見台から自由ケ丘、城山団地などを通り牛久駅西口までを往復)は平日上り下り計2便減、土日祝日は計6便減。※つくばエクスプレスやJR常磐線のダイヤ改正によりさらに変更となる場合もある。

放射線治療装置をリニューアル《メディカル知恵袋》1

【コラム・大城佳子】筑波メディカルセンター病院の医療従事者がこのコラムを担当することになりました。少し難しいかもしれませんが、皆さまのご参考になればと思っています。 放射線治療とは 放射線治療は手術や薬物療法と並び、がんの治療の中で重要な役割を果たしています。放射線治療はその名前の通り放射線をがんに照射します。放射線が当たったがん細胞はDNAに損傷を受け、死滅していきます。陽子線や重粒子線も放射線治療の一つです。当院では最も一般的なX線を使った治療を行っています。 X線はレントゲンやCT検査に用いられています。レントゲン検査の際に何の刺激を感じることなく、すぐに終わってしまうのと同様に、放射線治療も痛みや熱を感じることなく、短時間で終了します。体への負担が少ないことが放射線治療の最大の利点です。 そして放射線治療は「病気を治す」という根治目的以外にも、症状を良くする緩和照射、例えば、がんの痛み止めや麻痺の予防、止血などにも効果を発揮します。ですから、放射線治療はがん治療において幅広い効果を期待できます。 一般的にがん細胞は正常細胞にくらべて放射線に対して弱いため、毎日少しずつ照射をすることにより、正常な細胞を回復させながら、がん細胞だけを死滅させることができます(図1)。そのため、放射線治療では一般的に平日毎日の通院が必要です。図1 新しくなった放射線治療 近年、より高精度で効果的、そしてより副作用が少ない治療を目指して、放射線治療技術は目覚ましい進歩を遂げています。 当院では2015年以降、強度変調放射線治療(Intensity modulated radiotherapy : IMRT)を導入しています。これは「機械から出てくるビームの強さを変えて、避けたい臓器の線量を下げて、目的の腫瘍(しゅよう)にたくさん放射線を当てる」という治療です。当初は前立腺癌の治療にのみ利用されていましたが、最近は肺や骨盤など、様々な部位の照射に応用しています。 これにより、これまで治療が難しかった症例が治療できるようになったり、より副作用を少なく治療できるようになったりしています。 今回(2023年10月)、新しい放射線治療の機器(リニアック)が稼働します(写真)。通常の放射線治療に加えて、より高精度な治療に特化した仕様となっています。 小さな脳転移に対しては定位照射が適応となることが多いです。定位照射とはピンポイント照射ともいわれる治療です。小さな腫瘍に対して、大きな線量の放射線を少ない回数で照射することにより、強い効果を発揮します。これまで、複数個の転移に対して定位照射を行う場合は、一個ずつ治療する必要がありましたが、新リニアックでは一度に複数個の転移を治療することができるため、治療期間を短縮することができます(図2)。 また、近年では背骨(脊椎)の転移に対しても、定位照射を行うとより進行を抑えることができ、高い効果が期待できることが報告されています。しかしながら、背骨の中には太い神経の束である脊髄があり、たくさんの放射線が脊髄に照射されてしまうと副作用により麻痺が生じてしまいます。そのため、定位照射は非常に難しく、再照射も困難でした。 しかし、新リニアックには背骨の定位照射に特化したソフトが導入されたため、これまでに比べて定位照射のハードルが下がり、再照射が可能になる機会も多くなります。 最近の放射線治療 日本では歴史的背景から一般的に放射線に良い印象は持たれていません。しかしながら、医療で用いる放射線はその安全性が確立されています。また、一昔前は放射線治療=治らないという時代もありました。しかし、わずか10年前と比べても、現在の放射線治療の技術は格段に進歩し、より効果が高く、より安全になっています。 放射線治療の方法は様々です。ここにご紹介した高精度照射ではなく、古典的で簡単な放射線治療が最適な場合もあります。茨城県は通常のX線治療のみならず、筑波大学に陽子線治療、つくばセントラル病院にサイバーナイフを有しており、非常に放射線治療機器に恵まれています。 当院では、必要があればこれらの近隣施設にご紹介し、それぞれの特性を生かしながら、地域全体で、できるだけ速やかに、最適な治療を提供していきたいと考えています。(筑波メディカルセンター病院 放射線治療科診療科長) 【注】この記事は筑波メディカルセンター病院広報誌「アプローチ89号」でもご覧いただけます。

放射線治療装置をリニューアル《メディカル知恵袋》1

【コラム・大城佳子】筑波メディカルセンター病院(つくば市天久保)の医療従事者がこのコラムを担当することになりました。少し難しいかもしれませんが、皆さまのご参考になればと思っています。 放射線治療とは 放射線治療は手術や薬物療法と並び、がんの治療の中で重要な役割を果たしています。放射線治療はその名前の通り放射線をがんに照射します。放射線が当たったがん細胞はDNAに損傷を受け、死滅していきます。陽子線や重粒子線も放射線治療の一つです。当院では最も一般的なX線を使った治療を行っています。 X線はレントゲンやCT検査に用いられています。レントゲン検査の際に何の刺激も感じることなく、すぐに終わってしまうのと同様に、放射線治療も痛みや熱を感じることなく、短時間で終了します。体への負担が少ないことが放射線治療の最大の利点です。 そして放射線治療は「病気を治す」という根治目的以外にも、症状を良くする緩和照射、例えば、がんの痛み止めや麻痺の予防、止血などにも効果を発揮します。ですから、放射線治療はがん治療において幅広い効果を期待できます。 一般的にがん細胞は正常細胞に比べて放射線に対して弱いため、毎日少しずつ照射をすることにより、正常な細胞を回復させながら、がん細胞だけを死滅させることができます(図1)。そのため、放射線治療では一般的に平日毎日の通院が必要です。 新しくなった放射線治療 近年、より高精度で効果的、そしてより副作用が少ない治療を目指して、放射線治療技術は目覚ましい進歩を遂げています。 当院では2015年以降、強度変調放射線治療(Intensity modulated radiotherapy : IMRT)を導入しています。これは「機械から出てくるビームの強さを変えて、避けたい臓器の線量を下げて、目的の腫瘍(しゅよう)にたくさん放射線を当てる」という治療です。当初は前立腺がんの治療にのみ利用されていましたが、最近は肺や骨盤など、様々な部位の照射に応用しています。 これにより、これまで治療が難しかった症例が治療できるようになったり、より副作用を少なく治療できるようになったりしています。 今回(2023年10月)、新しい放射線治療の機器(リニアック)が稼働します(写真)。通常の放射線治療に加えて、より高精度な治療に特化した仕様となっています。 小さな脳転移に対しては定位照射が適応となることが多いです。定位照射とはピンポイント照射ともいわれる治療です。小さな腫瘍に対して、大きな線量の放射線を少ない回数で照射することにより、強い効果を発揮します。これまで、複数個の転移に対して定位照射を行う場合は、一個ずつ治療する必要がありましたが、新リニアックでは一度に複数個の転移を治療することができるため、治療期間を短縮することができます(図2)。 また、近年では背骨(脊椎)の転移に対しても、定位照射を行うとより進行を抑えることができ、高い効果が期待できることが報告されています。しかしながら、背骨の中には太い神経の束である脊髄があり、たくさんの放射線が脊髄に照射されてしまうと副作用により麻痺が生じてしまいます。そのため、定位照射は非常に難しく、再照射も困難でした。 しかし、新リニアックには背骨の定位照射に特化したソフトが導入されたため、これまでに比べて定位照射のハードルが下がり、再照射が可能になる機会も多くなります。 最近の放射線治療 日本では歴史的背景から一般的に放射線に良い印象は持たれていません。しかしながら、医療で用いる放射線はその安全性が確立されています。また、一昔前は放射線治療=治らないという時代もありました。しかし、わずか10年前と比べても、現在の放射線治療の技術は格段に進歩し、より効果が高く、より安全になっています。 放射線治療の方法は様々です。ここにご紹介した高精度照射ではなく、古典的で簡単な放射線治療が最適な場合もあります。茨城県は通常のX線治療のみならず、筑波大学に陽子線治療、つくばセントラル病院にサイバーナイフを有しており、非常に放射線治療機器に恵まれています。 当院では、必要があればこれらの近隣施設をご紹介し、それぞれの特性を生かしながら、地域全体で、できるだけ速やかに、最適な治療を提供していきたいと考えています。(筑波メディカルセンター病院 放射線治療科診療科長) 【注】この記事は筑波メディカルセンター病院広報誌「アプローチ89号」でもご覧いただけます。

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