《茨城の創生を考える》11 経営者がアントラーズに学ぶべきこと(下)

カシマスタジアムのアントラーズ・サポーター 【撮影:池田充雄】

【コラム・中尾隆友】前回、前々回の記事(上・中)では、アントラーズが地方の会社経営のお手本となる秘訣として、デジタルを駆使しながらマーケティングに労力と時間をかけていることについて述べた。アントラーズの前年度の売り上げはクラブとして初めて70億円台に達し、今後は100億円を目指して会社と選手が一丸となって邁進(まいしん)しているらしい。

「まちおこし」で始まったチーム

アントラーズが発足した25年前には、そのような売り上げを伸ばそうという発想はまったくなかったという。親会社の住友金属(現在の日本製鉄)や鹿島臨海工業地帯に進出した企業の方針に従って、まちおこしをしようと始まったクラブチームだったからだ。そういう経緯があったため、アントラーズの経営陣は親会社や鹿島進出企業がチームを支援してくれるだろうと思っていたというのだ。ところが意外にも、Jリーグのクラブチームとしてスタートした直後から、親会社や鹿島進出企業が「イニシャルコスト(初期費用)は出すが、ランニングコスト(運営費用)は何とか自らで稼いでほしい」と自立した経営を促されたという。他のJリーグのチームとは異なり、初めから厳しい現実に直面、それでは一生懸命稼ぐしかないだろうと腹をくくったということだ。

強い危機意識を持って生き残る

これまでアントラーズの経営を支えてきたのは、25年もの間、常に「明日、つぶれるかもしれない」と考えながら、強い危機意識を持ってやってきたということだ。商圏が他のチームと比べて圧倒的に小さいために、「つぶれないためには、勝つしかない」「勝つためには、何をなすべきか」といった思考回路のもとに、強いチームづくりと売り上げの伸びの両立を目指して運営されてきたのだ。

Jリーグが誕生した当時のクラブ(10チーム)は親会社の単なる広告・宣伝部門と見なされていたのだが、今でもJ1からJ3までの55チームのうち、経営的に親会社から自立できているチームはほとんどない。日本のプロスポーツチームの経営は親会社がある程度は補填(ほてん)して成り立っているので、そういった意味では、アントラーズは稀有(けう)な存在だったといえる。

経営は1020年先を予測して

私は、会社の経営者は10~20年スパンで未来を予測して対応していかねばならないと思っている。とくに地方の経営者は10~20年後に人口がどれだけ減るのかを意識しながら、戦略的に事業を縮小して利益が出やすい体質に変えていかなければならない。今からそういった備えを怠れば、地方の会社が生き残ることは難しいだろう。

それに加えて私は、10年後の顧客を予想しなければこれからのビジネスは駄目だという意識が欠かせないと考えている。10年後の社会はどう変わっているか、10年後の顧客の生活スタイルはどう変わっているか予測をしながら、今から少しずつ準備をしていかなければならないのだ。(経営アドバイザー)

※記事は鹿島アントラーズの鈴木秀樹取締役事業部長と対談した内容をまとめたものです。

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