筑波大学の教職員有志でつくる「筑波大学の学長選考を考える会」(顧問・指宿昭一弁護士)が、「(同大は)指定国立大学法人の申請にあたって、水増しした外国人学生数を文部科学省に報告していた」と指摘している問題で、世界版と日本版で異なる外国人学生比率を掲載した英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」(英タイムズ紙発行)は3月18日、この問題に対する見解(ステートメント)を発表した。
見解は「THEは筑波大学と共同で、世界大学ランキングに提出されたデータを理解し、今後のデータにどのような学生を含めるべきか提案するために作業を行った。私たちは、今後提出されるデータが我々の公表している定義に沿った一貫したものになると確信している。我々は今回の結果として筑波大学のランクに重大な影響が生じることはないと考えている」とした。
見解に対し、考える会は「THE社が、筑波大学に対し、定義上含めるべき学生のみを外国人学生に含めるよう勧告したことを明らかにした」ものだと述べた。
同大は昨年10月、指定国立大学法人に指定された。考える会は、指定国立大学法人の申請にあたって、「外国人学生数を水増しした」などと指摘、永田恭介学長はその責任を取るべきだとして、3月23日、萩生田光一文部科学相宛てに「次期学長に選出された永田恭介学長を再任用しないよう」に求める要望書を提出した。
他方、筑波大は「THEに提出した外国人学生比率の計算方法には大きな問題はなかった」との姿勢を現在まで崩していない。
問題となっているのはTHEに掲載された外国人学生比率(外国人学生の人数を全学生数で割り100を掛けた値)だ。世界版では同大の外国人学生比率は20%だが、日本版では12.60%で、実に7.4%もの違いがある。
考える会は「世界版においては本来含めるべきではない種類の学生を算入することによって、恣意的に外国人学生の比率を多く見せようとしているのではないか」と指摘する。
一方、同大学長補佐室長の池田潤教授(大学執行役員)=当時=は「最大の差を生み出しているのは『データの報告形式の差』。例えば、世界版では外国人学生の総数を報告し、日本版では学年別の人数を報告する。この際、学年という考えを持たない交換留学生が日本版からは漏れてしまう。形式の差がある以上は、数字上の差が出るのは当然のこと。恣意的な判断によるものではない」と反論した。
大学側の主張に対し考える会は「大学が示した計算根拠の表は、いかにして恣意的な水増しを行ったのかを丁寧に説明しているように読める」と批判する。「THEはフルタイム(通常のカリキュラムを受ける学生)ではない学生については、フルタイムの学生と比して数値を減ずることとしている。しかしながら筑波大学は単位の取得が出来ない『研究生』や他大学に所属をする大学院生で筑波大学では研究指導を受けるのみの『特別研究学生』を1人分として計算に入れている。これはTHEの示す基準に則っているとは到底言えない」と指摘する。
考える会が3月23日に文科相に提出した要望書は、THEのステートメントを受けたもの。要望書では「学長選考会は永田学長を『人格が高潔で、学識が優れ』『国立大学法人筑波大学の卓越性を高めることができる』として再選したが、その決定の正当性は失われているのだから、再選は適当ではない」と述べている。(山口和紀)
◆FTE換算について たとえば、通常4年で取れる学士を8年かけて長期履修し取得するような場合には、0.5人と換算するべきであるとされる。このように、パートタイム学生の数をフルタイム学生の数に相当するように標準化することを、FTE(Full-Time Equivalents=フルタイム等量)換算と呼ぶ。